呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『その身一つで、俺の元に嫁げ』
敵国の皇帝にプロポーズを受けたのは、初めて顔を合わせてから、わずか数時間後の出来事だった。
(夢のような提案を、真に受けた私が馬鹿だったのかもしれない……)
ミミテンス公爵家の一人娘として生まれたイブリーヌは、この世に生を受けた瞬間から亡霊の愛し子として蔑まれていた。
彼女の周りには赤子を守護するように。数えきれないほどの死した魂が集まり、禍々しいオーラを放ったからだ。
『うわぁあ! 化け物!』
『呪われた娘が生まれた!』
『亡霊の寵愛を受けた赤子など、手に負えん!』
彼らの醸し出す闇に引き摺り込まれないように。両親達はすぐさま赤子をいつ倒壊するかわからぬ、古びた離れの洋館へ置き去りにした。
『このまま誰も面倒を見なければ、忌々しい赤子が息絶えるはずだ』
『存在をなかったことにすれば、ミミテンス公爵家の名誉は守られるわ……!』
そんな両親の思惑通りに事が運べば、イブリーヌはオルジェントと最悪な結婚式を挙げることなどなかっただろう。