呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 何度も苦しそうに眉を顰めるあたり、亡霊がイブリーヌに不必要な単語を囁いているのかもしれない。

「約束しよう。俺は君に、嘘はつかないと」
「う、疑っている、わけでは……」
「ハクマ」

 オルジェントが白猫の名を呼べば、勢いよく大地を蹴った獣が彼女の胸元へと飛び込んだ。
 頬擦りをして親密さをアピールした動物は、尻尾を揺らしながら戸惑うイブリーヌに優しい言葉をかけた。

『やあ。僕は死神の使い魔、ハクマだよ。これからよろしくね』

 白猫の声が人間の言葉に聞こえるのは、オルジェントだけだ。
イブリーヌにわかるはずがない。

(余計なことをするな)

 そう非難の目をハクマに向けた彼は、すぐさまそれが間違いであったのだと知る。。

「白猫さん、は……。お話が、できるのですか……?」
『悪しき魂よりは、正しいアドバイスができると自負しているよ』
「私にも……。白猫さんのような、パートナーがいればよかったのに……」

 イブリーヌはハクマを愛おしそうに抱きしめると、彼女を覆い隠す闇のオーラが強まった。
 亡霊達は愛し子であるイブリーヌを、ぽっと出の神の化身に唆されて奪われるわけにはいかないと必死になっているようだ。
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