呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(信じてもらえるかは、わからん。彼女の周りの黒いオーラが、俺に危害を加えるかもしれんが……)

 それはイブリーヌだけではなく、あたりを彷徨く悪しき魂に、危害を加えるつもりはないと言う無言の意思表示でもあった。

(ある程度であれば、シロムがなんとかするだろう。あとは……)

 イブリーヌがオルジェントを必要以上に警戒して亡霊達へ加害するように命じ、大きな騒ぎに発展しないのを願うしかなかった。

「あの、でも……。私、は……」

 彼女は何度も眉を顰め、断片的な単語を紡いでは苦しそうに首を振った。
 恐らく、悪しき魂達の声に惑わされて揉めているのだろう。

(あれには耳を傾けるなと、言ったんだがな……)

 イブリーヌにとって亡霊達の言葉は絶対だと感じるような出来事が、オルジェントの知らない所で起こっていたのかもしれない。

(戸惑う彼女に手を差し伸べ続けるのは、負担になるのかもしれん……)

 そう考えた彼は、手を引っ込めようとしたのだが――。
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