呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『亡霊の愛し子が捨てられた』
『酷い親だ』
『守らなくちゃ』

　――残念ながら彼女は、生き残ってしまった。
　イブリーヌを助けるために動物達の身体を借り、幼子の成長を手助けした。
　亡霊達の協力によって……。

　人ならざるものに育てられた彼女は、本来貴族令嬢として受けるべき教育を一切学ぶことなく、息を殺して生きてきたが……。
　死んだと思っていたはずの人間が生きていると知れば、当然両親達もあの手この手で彼女を痛めつけ、命を奪おうとする。

(私が皇帝の寵愛を受ける皇妃になんて、なれるわけがないのに……)

　皇帝がイブリーヌとの結婚を急いだのは、両親が娘を虐げる場面を目撃したからであった。
　心優しい彼は、彼女をミミテンス公爵家の手が届かぬ場所へ庇護するために、非常識なプロポーズをしたのだ。


　彼女に対する、皇帝の同情心だけで決まった結婚だった。

　せめて、二人の間に愛情が芽生えていれば。
　今とは違った結果になったのかもしれないが……。
　大勢の人々が見ている前であのように堂々と愛のない結婚であると強調されてしまえば、夢や希望を抱けるはずなどなかった。
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