呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(問題は、どうやって彼女に信頼を得るかだな……)

 彼にとっては、それが一番難しい。
 オルジェントは自身と対等な人間と会話をした経験がなく、口下手である。

 皇帝として舐められぬように高圧的な態度が板についており、必要以上のことは語らない。

 つねに騒がしい悪霊達に喚かれているせいで自分の言いたいことも言えず、じっと黙っているイブリーヌとの相性は、最悪と言ってもよかった。

(俺が誰にでも物怖じせずに笑顔で話しかけられる、華やかな好青年であれば……)

 オルジェントは彼女の胸元で大人しく抱きしめられているハクマを恨めしそうに睨みつけ、深いため息を溢した。

(無いない物ねだりをしたところで、なんの意味もない……)

 彼女が亡霊の女王として覚醒すれば、自らの命にかかわるのだ。
 ――自らが治める地を、護り続けるためにも。
 彼は自分なりのやり方で、イブリーヌの信頼を勝ち得るしかなかった。

「へ、陛下……。こ、こちらが……。我が家になります……」

 難しい顔をしながら物思いに耽っていたオルジェントは、控えめな彼女の声を耳にしてはっと我に返る。
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