呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 たとえ上辺だけであったとしても。

 彼女に好意を抱くオルジェントの気持ちが、本物であると表明するように――彼が心の中でそう宣言したことより、運命の歯車が音を立てて狂い始める。

『許さない』
『許せない』
『ユルサナイ』

 オルジェントの心の中で小さな恋の芽が芽吹いたことを察知した亡霊達が、愛し子を奪おうとする彼に牙を剥いたのだ。

『私達の愛し子』
『誰にも渡さない』

 オルジェントに向かって憎悪を露わにする彼らは、闇のオーラを部屋中に充満させて彼を飲み込もうと目論む。

「それはこちらの台詞だ」

 イブリーヌが亡霊の愛し子として生まれ、オルジェントが死神と呼ばれるようになった現状は、変えようのない事実だ。

(彼女を愛すると言うことは、こいつらに俺が伴侶であると認めさせる必要が出てくる)

 イブリーヌに害をなす魂達は、本来であればひとつ残らず刈り取らなければならないが――全てが悪意や憎悪を抱えているわけではないのだ。

「大人しくしていれば、見逃してやる」

 彼は大鎌を背中から引き抜き構えると、人の形を象った闇のオーラを睨みつけた。
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