呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『呪ってやる』
『ノロッテヤル!』
『あの子に愛を囁けない呪い!』
『愛し子を無理やり手籠めにしようとした罰!』
『あの子がお前に真実の愛を抱かぬ限り、解けない呪詛――』

 普段のオルジェントであれば、彼らの言い分など聞かずに魂を刈り取っていたが――この場にいる亡霊達は、イブリーヌの使い魔に近い。
 もしも彼女が彼らと契約を交わしている場合。
 亡霊達を傷つければ、彼女の命を奪いかねない。

(愛しい彼女を、これ以上苦しませるわけにいかない)

 オルジェントは大鎌を握る柄に力を込め、慎重に事を運ぶつもりだったのだが…………。

『オルジェント・ドゥム・アヘンドスは、イブリーヌ・ミミテンスに愛を紡げない』

 ――その傲りが、イブリーヌを長年苦しめることになるなど気づかずに。

「な……っ」

 オルジェントが大鎌を振るい、悪しき魂を刈り取るよりも早く。
 亡霊達が彼の身体に纏わりつき、黒い光を放る。

(呪い、だと?)

 彼は必死にその靄から逃れようとしたが、結局抗い切れず――オルジェントの身に、ある呪いが刻み込まれた。
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