呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない

(彼女が俺に真実の愛を抱かぬ限り、イブリーヌに気持ちを伝えることは叶わない……)

　やはり、悪しき魂達はさっさと刈り取るべきだったのだ。
　先程の判断ミスを悔やんだ彼の表情はどんどん険しくなり、その光景を目にしたイブリーヌは自身を責める。

「あ、あの……。ご、ごめんなさい……」
「なぜ、君が謝る」
「私なんかが、陛下の社交辞令に……喜ぶなど、おこがましい、ですよね……」

　彼女は明らかに、オルジェントの眉を顰めた表情に怯えていた。

　イブリーヌを苦しめる存在がまさか自分であるなど、想像もしていないのだろう。
　彼は愛する人の後方に浮かび上がる、忌々しき闇のオーラを睨みつけた。

「また、亡霊達が何かを囁いているのか」
「あの子、達にも……。私が生きることに肯定的な子と、意地悪ばかり言う子が混ざっているのです……」

　イブリーヌは亡霊達の声を完全に無視して生きるのは難しいようで、どうしても気になってしまうのだと悲しそうに目を伏せた。

(俺は彼女を、傷つけたいわけではない)

　彼は言葉で愛を伝えられない代わりに、行動で示そうと決意する。