呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 そうしたネガティブな願いを抱く彼女の気持ちに、応えるように。
 亡霊達は嬉しそうな言葉を響かせた。
 
『愛し子の望みを叶えよう』
『人間から女王に』
『みんなで、力を合わせて!』

 彼らはイブリーヌが亡霊の女王として覚醒し、仲間を切り刻んだオルジェントに対する復讐を目論んでいるようだ。
 悪しき魂達は彼女の望みを叶えるために手を取り合い、イブリーヌが暮らす洋館を消滅させようとしたが――。

『イブリーヌ! 駄目だ!』

 ――そこに、邪魔が入った。

 勢いよく地を蹴り彼女の胸へ飛び込んだ白猫は、小さな肉球を使ってペチペチとイブリーヌの頬を叩くと、オルジェントの代わりに叱りつける。

『君の幸せを願う亡霊達は、1割にも満たない! 彼ら以外の言葉に耳を傾けたら、オルジェントが君を妻として娶った意味がなくなってしまう!』

 ハクマは必死にイブリーヌの説得を試みたが……。
 白猫の言葉は今の彼女にとって、なんの意味もない。

(私は陛下に、愛されたかった……)

 イブリーヌが欲するのは、彼の愛だけであったからだ。
< 62 / 209 >

この作品をシェア

pagetop