呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(どうして……)

 彼女と顔を合わせれば、どうなるかなど火を見るより明らかだからだ。

『悪魔が来た』
『愛し子を傷つける、悪い奴!』
『倒さなくちゃ』
『神の使いよりも、もっと邪魔な奴!』

 イブリーヌは藁にも縋る思いで、ハクマの小さな身体に顔を埋める。

(私を、傷つけようとするの……?)

 亡霊達は、イブリーヌの死を望んでいる。
 白猫は、彼女の頬を傷つけた。
 母親は娘が生まれてきたことを悔やみ、虐げ――。
 地獄から救い出してくれたはずのオルジェントは、彼女を精神的に追い詰めた。

(みんな、いなくなってしまえばいい)

 彼女の願いに呼応するかのように。
 悪しき魂達が、洋館の中までやってきた母親を取り囲む。

「一体、どう言うことなの!? 敵国の皇帝と、私達の許可なく結婚するなんて!」

 怒り狂う彼女は自身の周りに、亡霊達が犇めき合っていることに気づけない。
 彼らは喚き散らす母親の周りを飛び回りながら、笑い声を響かせる。
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