呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「こんなことになるなら、さっさとデイス男爵の第5婦人として、嫁がせておけばよかった!」
「お、お母、様……」
「今まで育ててやった恩も忘れて、自国を裏切った愚女が……!」

 母親から罵倒を受けたイブリーヌは、何を言われているのか理解するまで長い時間を有した。

(陛下と結ばれては、いけなかったの?)

 そんなはずはないと必死に頭を振る彼女は、腕の中にいる白猫を強く抱きしめる。

(私を助けてくれる人なら、誰でもよかったのに……)

 もっと早くにオルジェント以外の誰かがイブリーヌを助けていれば、その人物と結婚していただけの話だ。
 傷つく必要はないと、わかっているのに――。

(こんなにも、つらくて、苦しい)

 オルジェントに冷遇され、手酷い裏切りを受けた彼女にとっては――母親の喚き声ですらも。
鋭利な刃物のように、自身を傷つける危険なものでしかなかった。

『愛し子を苦しめる悪い奴』
『もっとあの子を痛めつけよう』
『そうすれば、イブリーヌは私達の仲間になる』
『名案だ』
『そうしよう』

 亡霊達は不気味な笑い声とともに、母親へと乗り移る。
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