呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 闇のオーラを纏って禍々しい存在に変化した彼女は、覇気迫る表情とともに。
 イブリーヌをさらなる絶望へと突き落とそうとするが――。

 その目論見が、達成されることはなかった。

「ハクマ!」

 ――聞こえるはずのない声を耳にした瞬間。
 イブリーヌの胸元に抱きかかえられていた白猫の瞳が、金色に光る。

 ハクマが鋭い瞳で彼女の母親を睨みつければ、勢いよくそこから眩い閃光が発された。

「ぎゃあああ!」

 それをもろに受けた母親は、この世のものとは思えぬ断末魔を上げると、胸元を抑えてのたうち回る。

『死神だ』
『怖い奴』
『逃げなくちゃ』
『愛し子を守れ』

 母親の内側から複数の悪しき魂達が、早口でそう捲し立てる。
 その後彼らは、身体の中から一斉に飛び出してきた。

 亡霊達はイブリーヌの元までやってくると、彼女の背後で蠢く闇と同化する。

 母親の背中には禍々しい闇のオーラと、黒いヘドロを撒き散らす異形の化け物だけが残った。

「動くなよ」

 ハクマに一声かけたオルジェントは、背中から勢いよく大鎌を引き抜く。

――スパンッ。

そんな軽快な音とともに鎌を振るい、その恐ろしい物体を切り刻んだ。
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