呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『愛し子が嫌がってる』
『悪い奴なのに』
『イブリーヌを傷つけた』
「わ、たし……は……っ」

 ――妻が一方的に、夫へ離縁を宣言したのだ。

 追いかけてきた彼の言い分を耳にしたところで、もっと傷つくことはあっても。
 心が和らぐことはない。

(亡霊達の囁く声も、陛下のお言葉も。全部、聞きたくない……っ)

 そう願ったところで。
彼女が逃げる場所は、ここ以外に存在しない。

『こっちにおいで』
『楽になろう』
『私達が、全部壊してあげる』

 亡霊達の言葉を拒むように無言で首を振ったイブリーヌは、精神だけなら逃れられる術があることを思い出し――。

「イブリーヌ」

 意識を手放そうとした瞬間。
オルジェントに背中から抱きしめられた。

「は、離して、ください……っ」

 耳元で名前を呼ばれた彼女は、その手から逃れようと必死に暴れる。
 だが、どれほど拒絶しても。
 彼女のひ弱な力では、オルジェントには勝てなかった。
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