呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「離縁すると騒ぎ立てたことは、撤回します……」
「ああ。ありがとう。俺の元に、戻ってきてくれて……」
「いえ……」

 オルジェントはほっとした様子で口元を緩めたが、イブリーヌは気まずくて仕方ない。自分が騒ぎ立てたせいで、彼の手を煩わせてしまったからだ。

『アキレタ』
『興ざめだ!』
『もう少しだったのに』
『なんで失敗したの?』
『今度はもっと、取り返しのつかない計画を立てなくちゃ!』

 そんな彼女の罪悪感に取り入るべく、キヒキヒと恐ろしい笑い声を響かせて亡霊達が相談し合う声も、今のイブリーヌには聞こえなかった。

(陛下と一緒なら……。あの子達がどんなに騒ぎ立てても、怖くない……)

 彼の暖かなぬくもりに包み込まれると、あれほど荒んでいた心が緩やかに凪ぎ、安らいでいくのを感じる。

(ずっと、そばにいたいのに……)

 どうして自分は、このぬくもりから逃れようとしていたのだろうか。
 そう、自問自答を繰り返しながら。

 一日中気を張っていた彼女は、ぷつりと糸が切れた人形のように。
 全身から力を抜くと――深い眠りに、誘われた。
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