呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『亡霊の愛し子を世界で一番愛しているのは、私達だけよ』
今日も誰かが耳元で、イブリーヌに甘い言葉を囁いている。
『人間なんて、信じるに値しない』
それが悪しき魂の声だと知る彼女は、必死に聞こえないふりをして嵐が過ぎ去るのを待つ。
『早くこっちにおいでよ』
どれほど誘われても、イブリーヌが彼らの手を取ることはない。
「イブリーヌ……」
二つに一つしか、選べないのなら。
彼女はオルジェントに差し伸べられた手に、自らの指先を触れ合わせると決めたからだ。