呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(最高に、とつくくらいだから……。悪いことではないと思うけれど……)

 不安になったイブリーヌが視線を逸した瞬間。
 苛立った様子の彼から、舌打ちが聞こえてきた。

「これも駄目か……」

 自分のせいだと勘違いした彼女は、ビクリと全身を震わせる。

(陛下はやっぱり、私と一緒にいたくないんだ……)

 そんな二人の様子を見かねたのだろう。
 白猫はぴょんっと床を蹴りベッドの上に飛び乗ると、長い尻尾を揺らしながら呆れた声を上げた。

『君達は本当に、僕がいないと駄目なんだね』
「白猫さん……」
「夫婦水入らずの時間に、割り込んでくるな」
『もちろん。いい雰囲気になったら、退散するよ。このままじゃ勘違いが大きくなるだけだから、助け舟を出してあげようと思っただけさ』

 ハクマは夫婦の仲を取り持つために、姿を見せたようだ。
 白猫はイブリーヌの誤解を解消するために、彼女へ優しく言い聞かせた。
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