呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「え、ええっと……」

 イブリーヌは夫がなぜ突然、ハートマークを手で表現し始めたのかわからず……。
 首を傾げて、不思議そうに彼を見つめるしかなかった。

(陛下は私に、言葉で伝える気はないようだし……)

 迷った末に、空中を漂う悪しき魂達にお伺いを立てると決めたようだ。

『みんな、愛し子が大好き!』
『らぶらぶ!』
『仲間だと思っているから、酷いことはしないの』
『世界で一番イブリーヌのことを、愛しているんだよ!』

 彼らは先程まで恐ろしい笑い声を響かせていたのが嘘のように、オルジェントが伝えたかったことを明るい声で囁き合った。

「道具として扱うことができずに、今に至るのですね」
「そうだ」

 亡霊達はイブリーヌを精神的に追い詰めることばかりを言うが、たまには役に立つこともある。
 彼女がペコリと頭を下げてお礼を告げれば、悪しき魂達はクスクスと笑い声を上げながら嬉しそうに、夫婦の周りを飛び回った。
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