琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?


パーティー会場に入っていくとすぐにあちこちから声がかけられる。
まあ目立つよね。うちの社長。
キラキラオーラ放ってるし。

とりあえず歓談中の主催者に遅れてしまった謝罪とご挨拶をしているとあっという間に周りに人が集まってきた。

基本的に私は黙ってニコニコしていればいいのだけど、今日はご婦人方からよく声を掛けられる。

今日も素敵なファッションねぇ。あら旦那様とお揃いなのねと言われてよく見たら社長の胸元のチーフと私のワンピースはお揃いだった。

女性たちの口がせわしなく動く。最近顔を見なかったから心配してたのよ、体調が悪いのかと思ったとか妻も働いていると夫と時間が合わずに大変ねとか。
要するになにが言いたいかというと不仲なの?それとも妊娠でもしていて体調が悪く同伴しなかったの?ってあたり。

私が口を開かなくても社長が代わりに答えてくれる。
「私が妻を外に出したくなかったんですよ。あまり外の世界を知ってしまうと私の腕から飛び立っていってしまいそうで」
「彼女との子どもはかわいいでしょうが妊娠出産時に妻に何かあったらと思うと心配で」
「子どもが生まれても彼女の興味を自分に引きつけておくにはどうしたらいいでしょうか。例え私の子どもでも妻がとられるなんて自分には耐えられそうもない」
などとどの口がそれを言うんだと呆れるばかりの発言をしていた。

さすがイケメンアメリカ人。
普通の日本人の口から漏れたのがこれだと白い目で見られる可能性もあっただろうけど、発言したのはこの男だ。
これを聞いて無言でぽーっと頬を赤くするご婦人がいたりまぁまぁまぁなんてはしゃぐご婦人がいたり。苦笑しながら心の中でけっと思っていたのは男性陣と私だろう。

よく口の回る社長の隣に立っていただけだけど、ものの30分もしないうちに私は疲れていた。
早く帰りたい。

「顔、引き攣ってるぞ」
耳にキスするふりをして囁かれた。

そんなキザな仕草にまたため息や歓声、悲鳴のようなものが上がる。

「ちょっと水分をいただいてくるわ」

喉が渇いたと訴えると「なら一緒に行こう。間違ってアルコールを口にすると困るからね」ともしかしたら妊娠しているのかなんて憶測を呼ぶようなことを言って私の腰を押し出し歩き出した。

この発言、もうマジで怖いんですけど。
絶対に敵対したくないタイプの人だ。

くいくいと腕をひいて、ん?と頭を寄せてくれた社長の耳元で囁く。
「名演技、感服いたしました。そろそろ終わりませんか」

もういいよね?
社長の糖分過多な発言に私の喉がカラカラだ。でもひとりで飲み物も取りに行けないし。

今夜のこれでシュミット夫妻の不仲説は払拭されるだろう。ううん、絶対されるはずだ。

アルコールとカフェインが入っていないものをウェイターに確認して私に手渡す辺りも芸が細かい。いや細かすぎる。

おかげでオレンジジュースを飲む羽目になった。

別に嫌いじゃないのよ、オレンジジュース。
でも今はごくごく冷たくて甘くない飲み物が飲みたかったの。冷茶とかウーロン茶とか。

だって本当に社長の発言が糖分過多だったんだもの。

隣で社長がごくごく飲んでいるさっぱりスッキリ冷えたウーロン茶が羨ましい。いや恨めしい。
やっぱり自分だって糖分過多で喉が渇いていたんでしょ。


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