琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「あなたはそうおっしゃいますけど、別に私が彼にしがみついてるわけではないんですよ。彼はあなたになんて言ってるんです?私と別れたらあなたと結婚するとでも?それともあなたと結婚したいけれど、私が別れないって言ってるからダメだと?」
実際社長がこの人とどんな付き合いをしていてこの人になんと言っているのかはわからない。ただウソをつくような人ではないから現状私と別れてこの人と結婚したいと思っているようには見えないってだけで。
「ーーー生意気な女ね」
彼女は眉をつり上げる。
「ふふ。あなたにとってはそうかもしれませんね。じゃあ主人が私のことを待っているのでもう行きます」
私がわざと主人というと彼女は眉をつり上げた。
いつもなら反論しない私がアグレッシブに言い返したものだから彼女の怒りの火に油を注いでしまったらしい。
私がメイク用品を片付けて歩き出すとすれ違いざまに腕を掴まれる。
「待ちなさいよ」
痛い。
この人元アスリートかなんかだろうか。女性の力とは思えない強い力で腕を掴まれて振りほどくことが出来ない。
「今夜はずっと二人で過ごす予定だったのにあなたがこんなパーティーに連れ出すから夕食しか一緒に出来なかったじゃないの。書類だけの妻なら我儘言うんじゃないわ」
「あらそれは申し訳ありません。でも今日のパーティーに参加を決めたのは夫の独断なの。文句なら私の夫にどうぞ」
主人やら夫やらのワードで彼女の地雷を踏んだのはわざとだ。
今日の叔父との面会や今夜のパーティーでの社長の言動で私は心身共に疲れているしいい加減この人にも苛々している。
確かに私たちの結婚は主に私の事情によってされたものだけど、いま婚姻関係を継続をしているのは社長の意志だ。今離婚されると少々面倒だけど、あの頃と違って今なら私も自分の身を守ることが出来ないわけではない。
「あらあらずいぶんと小賢しくなったものね。ふんっーーーそうそう、いいこと教えてあげるわ。私たち夕食にガーリックがたっぷり効いた料理を食べたの。一緒に食べた私は匂いが気にならないけど今夜は彼とキスはしない方がいいわよ。あら、ごめんなさい、夜を共にしないあなたには関係ない話ね」
はあ?
夕食にガーリックを出したーーってことは本当に社長は彼女とディナーを食べてこのパーティーに合流したってこと?
大政での売り言葉に買い言葉でパーティーに参加することになってしまったのかもしれないけど、なんだか妙に腹が立つ。
「さあ、わかったら早く戻って彼を私のところに帰して頂戴」
彼女にどんっと押されて化粧室から追い出された。
何だかいろいろと納得出来ない。壮絶に腹が立つんですけどっ。
そもそも本当に今日無理してこのパーティーに出席する必要はあった?
パーティーに出るための準備は男性の数倍大変だし、ここに来てからも散々社長の言動に振り回されて。
偽装夫からの甘い台詞と過剰スキンシップに愛人からの嫌がらせ付き。
ああ、もうマジでむかつく。