琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
ーーーー2年7ヶ月前。
『頼む。ちょっとクリスの脳みそ貸してくれ』
休日出勤から帰ると滉輔からそんな連絡が来た。
自宅マンションに呼んだのはいいがちょっと驚いた。
やってきたのは滉輔だけじゃなかったのだ。
ウソだろ、マジか。
滉輔以外に女性が2人。
玄関の外に俯く若い女性とその子の肩を抱くようにして支えているこれまた若い女性がいた。
滉輔だけを中に引きずり込んで小声で文句を言ってやる。
「女連れだとは聞いてないけど。いったいどういうつもりだ」
俺は絶対に女を自宅に連れてこないことにしている。
面倒くさいことになるのはごめんだからだ。
「すまん。一人は俺の彼女、でもう一人の泣いている子はその親友なんだ。頼む、ちょっとでいいからアドバイスくれ。マジで困ってるんだ。あの子の人生かかってる」
滉輔の珍しく真剣な様子に振り返って玄関を見ると、女の子二人は玄関の中に入ることもせず佇んでいる。
一人は声も出さずに静かに涙しもう一人は彼女をしっかりと抱きしめていた。
その普通じゃない様子に俺は滉輔を信じることにした。
「わかった。とりあえず中に入ってもらって。どういうことか話は聞く。けど何か出来るかどうかは別の話だぞ」
「ああ、サンキュー」
正直面倒なことに巻き込むのは勘弁してくれ、と思ったが目の前で困っているのが親友の関係者であるなら仕方ないと思ったのだ。
そして話を聞いて驚いた。
泣いている子は戦後急成長した有名企業、大政の社長の一人娘だった。
「待てよ、株式会社オーマサの社長って確か・・・・・・」
泣いている彼女を見て口を噤む。
「そう。少し前事故に遭って社長夫妻ーーー彼女のご両親は亡くなった」
残念なことに俺の情報は間違っていなかったらしい。
確か自動車事故だったと記憶している。
「この子、大政葵羽ちゃんっていうんだけど、2年前からロンドンに留学中でさ、事故の時も向こうにいたんだ。急いで帰国したけどなにせ即死だったから・・・」
声を出さずに泣いていた彼女が初めて「うっ」っと小さな声をあげしゃくり上げ滉輔とその彼女が痛ましげな視線を向けた。