琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
ーーーさてどうするか。
できれば一時的ではなく永続的に葵羽の安全を守ってやりたい。
昨日葵羽に確認したが大政の経営などには興味はないそうだ。だが、葵羽の保有する株式は元々祖父から譲渡されたもので、祖父の願いは葵羽の子どもにそしてそのまた子どもに受け継いで欲しいといわれていたものだという。
だから出来ればこのまま持ち続けたい。
だけどそのせいで野木の家に嫁ぐ羽目になるのなら手放すことも考えるということだった。
葵羽は野木に嫁ぐなんてとんでもない、まっぴらごめんだと言い切っていた。
瑠璃の存在も野木にバレているのならそのうち滉輔の存在がバレるかもしれない。
そうなるとこちらが絡め手で仕掛けている時間はない。
瑠璃も美大をずっと休ませておくわけにもいかないだろう。しかし瑠璃の登下校であとをつけられ葵羽の居場所が割れる可能性もある。
葵羽も自分の大学のことが気になっていたようだし、早急な対策が必要なのは間違いない。
さて、どうするか。
実は昨夜のうちに1つ名案を思いついていた。
ーーー攻撃は最大の防御というが、この案に葵羽は頷いてくれるだろうか。
この策だが、葵羽の協力がないとどうにもならない。
どうしたものだろう。
いや、提案するのも時期尚早というか、これは最後の手段だろうな。
それからまたあちこちと連絡を取り合い情報を集めたが野木という男はやりにくい相手だと再認識するだけだった。
夕方、滉輔に青山にあるオフィスに来てもらいお互い調べたことなど情報共有し対策を相談していた。
「大政の、というか野木の葵羽ちゃんに対する執念が過ごいな。このままだと今泊まってるホテルまでバレそうだ」
「そうだな、明日の昼にチェックアウトさせるか」
「次はどうする?」
「数年前に日本のプリンセスが泊まったホテルがあっただろ。長期滞在型マンションみたいなとこ。あそこはどうだろう」
「あー、あそこか。だが駅近でセキュリティーはいいけど自炊設備があるからホテル内にレストランのバリエーションがない。あまり出歩いて欲しくないから買い物には行かせられないし」
「だが安全だぞ。裏は派出所だし」
「まあそうだな、ただ何ヶ月も住むというわけにはいくまい」
「確かに長期で暮らすのは無理だな」
身を隠すといっても専門業者のセキュリティーをつけるならともかく遠くの別荘地に行かせるのも心配だ。
やはりはやく何とかしないと。
あらゆる可能性を考えていると、デスクに置かれた滉輔のスマホが振動した。
「瑠璃からの着信だ、とるぞ」
いやな予感がする。葵羽と一緒にいる瑠璃が仕事中の滉輔にメッセージではなく電話をしてきたということは何か緊急の用事があるからではないだろうか。
もしかして大政の誰かに居場所がバレたか。
最悪の事態を想像し滉輔が電話に出る様子を見守った。
「どうした、瑠璃ーーー」ああ、それで、と相づちをうつ滉輔の顔がどんどん険しくなっていくのを見て、自分の予想が当たったのだと判断した。
「クリス」
滉輔が通話を切らないところをみてもかなりまずい状態であると思う。
「二人で夕食の買い出しをするためにホテル内のコンビニに行こうとして隆一に見つかって、慌てて二人で逃げてタクシーに飛び乗ったところだって。隆一はひとりじゃなくて大政で見たことがある男と一緒だったと葵羽ちゃんが言ってるらしい。そのままここに来るように指示したけど、いいか?」
「もう見つかったか」
それにしても早い。早すぎないか。
ーーーつけられていた可能性ともうひとつ。
「念のため葵羽のスマホの電源を落とすように伝えてくれ。それと、タクシーの行き先はここじゃなくて先日の俺のマンションに」
まさかと思うが追跡アプリをインストールされていないか心配になる。
「今もつけられてると思っていいだろう。マンションのコンシェルジュに連絡をしておくからタクシーが着いたらマンション内に飛び込んで不審者につけられてるといって保護してもらえ。さあ俺たちも移動するぞ」
セキュリティーを考えたらこのオフィスよりマンションの方が安全に決まっている。
滉輔が彼女たちに指示している間に俺も自宅マンションのコンシェルジュに電話をして女性が向かっているから保護して欲しいことを頼む。
電話に出た男性コンシェルジュが対応してくれると約束してくれ必要があれば警察に躊躇なく通報して欲しいこともお願いしておく。