琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
俺たちがマンションに着くとちょうど男性コンシェルジュに守られるように二人が建物内に入っていくところだった。
どうやらコンシェルジュは建物の外で待っていてくれたようだ。
きめ細やかな対応に感謝しつつ彼女たちの無事がわかり胸をなで下ろした。
すると目の前の道路、車2台分離れたところにタクシーが止まり、中から出てきた男と視線がしっかりと合った。
20代半ばの痩せた男ともう一人、30代前半といったところか。
彼らの視線が葵羽たちを見ていたから、こいつらが例の従兄弟の隆一と大政の社員なんだろう。
「ストーカーとして訴えるか」
滉輔が囁くが俺は首を横に振った。
「訴えるのは今じゃない、俺に考えがある。だが、とりあえず警告はしておくかーーー滉輔、お前ひとりで行ってこい。”俺の彼女に何か用か”って。葵羽に用があるって言われたら無視でいいから。一緒にいるのは瑠璃ちゃんだし、瑠璃ちゃんの部屋も見張られてたんだからな。しつこくするなら警察呼ぶぞって」
頼んだぞと言って俺は奴らに背を向けてマンションのエントラスに向かって歩き出した。
コンシェルジュデスクの奥にある部屋に匿われていた二人を連れて俺の部屋に向かった。
もちろんコンシェルジュには丁寧にお礼を言って。後日きちんとお礼もするつもりだ。
二人は部屋に入ると真っ青な顔をして床にへたり込んだ。
相当怖かったのだと思う。それはそうだ。
すぐに滉輔も部屋に来て瑠璃の肩を抱き葵羽にも優しく声を掛けてやっている。俺も優しく宥めてあげたいところだが、大政の連中が犯罪まがいのことまでしてくるのがわかったのだから慰めるより先に手を打つことが必要なんだと思う。
この手を使うのはどうかと思ったが・・・・・・仕方ない。葵羽がどうするか、その決断次第だ。
「向こうがここまでしてくるとなると、こちらには猶予がないと考えるべきだ」
俺の言葉に滉輔が頷き葵羽は身体をビクリと震わせる。
脅したくはないけれど、これは仕方ない。
「大政葵羽さん。私と結婚して大政の家を離れる気はあるか」
「クリスさん、今なんてーーー?」
葵羽は上目使いで俺を見つめ、今なにを言われたのか理解できないようだった。
瑠璃はぎょっとして目を見開いている。
滉輔は口を開きかけたが何も言わず口を閉じた。
「野木はきみをどうしても自分たちに取り込みたいんだ。恐らく強引に自分たちの都合のいいように会社人事を動かしたことで内外からの批判を集めていることに焦っている。きみのご両親の事故も野木が仕掛けたんじゃないかなんて噂があがるくらいだ。きみを隆一と結婚させて財産を手に入れると同時に悪評を払拭したいんだろう」
「そんな・・・」
「だから、きみが逃げるためには大政の家を離れ誰かと婚姻を結んでしまうのが一番だと思う。他にあてがあるのならそいつと結婚すればいい。でも時間的に余裕はないからできるだけ早急に。可能であれば明日、明後日のうちには届を出した方がいい」
葵羽は息を呑んだ。
瑠璃は驚きすぎて口がきけなくなっている。
「誰かあてはあるか」
「そんなひと、いません・・・・・・」
「じゃあわたしでいいな」
「でも、そんな迷惑かけられません。結婚ですよ、結婚ってーーーー」
動揺から指先は震え、顔色は青白い。