琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
大政の本社ビルを出て車に乗り込むと葵羽が堪えきれないとばかりに口を開いた。
「叔父と従兄弟が失礼で本当にすみませんでした。でもあんな面会の約束なんてしてよかったんですか」
「ああ、いいんだ。その方が向こうの出方がわかるから。どんな動きをしているか調べる手間が省けるし」
「そういうものなんですか」
「そういうものだね。それにね、実はもっと食い下がってくると思っていたいたからこんな程度で済んだ方が驚きだな」
「はぁ」
「そんなことよりこれから数日、特に今日はまだ忙しいから。気合い入れて頑張ってくれよ」
え?と葵羽が首を傾げる。
「結婚式はしないけど、指輪は贈るつもりだし、ウエディングドレス姿の写真も撮るつもりだ。新居への引っ越しもあるしやることは山積み。今日が結婚記念日になるのだし特別なディナーもだな」
ぽかんと口を開けた葵羽に
「確か私の方の事情にも協力してくれるのだったよね。偽装結婚ではないのだし」
昨夜の約束を思い出させるように告げる。
「ゆびわ、ドレス、しんきょ、けっこんきねんび・・・・・・」
どうやらそこまで考えていなかったらしい葵羽はオウムのように繰り返している。
今頃気づいても遅い。
もう俺に捕まってしまったのだ。
ーーー俺は葵羽の隣にいる権利を得た。