琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
もうそろそろ潮時?
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「やば、目の下にクマが」
鏡を見てがっかりした。
まだ若いと思っていたけれど、睡眠不足が顔に表れる年になってしまった。
昨夜のパーティーで社長にキスなんて大胆なことをしてしまったせいで寝付きが悪く、やっと眠れたと思ったら昔の夢を見てしまったのだ。
「うぅ、気分わるっ」
お酒も飲むんじゃなかったわ。
飲まずにはいられなかったんだけど。
パーティー前に軽食を摂り帰宅後に野菜スープでもと思って予め準備しておいたけれど、社長の過剰な俺たち愛し合ってます演技と社長の愛人(仮)からの攻撃でぶち切れを起こした私がしたのはエレベーターの中で社長を壁ドンしディープキスをかますというとんでもない行為で・・・・・・帰宅してから口にしたのはスープじゃなくてアルコールだった。
胃は荒れムカムカするし、頭もぼーっとする、目の下にクマがあるし顔は腫れぼったい。
今日は午後からの出勤でよかった。
主に私の事情で結婚することになった私と社長。
公的に認められた夫という存在がありがたいと実感したのはすぐだった。
あの時社長は全ての面倒事を一手に引き受け、すぐに私を留学先のイギリスに送り出してくれた。
だから実家の管理も会社の株式、相続した遺産、あの面倒な叔父たちとのやりとりなど私は全く関わることなく無事に留学を終え大学も卒業することが出来た。
社長は全てのことから私を守ってくれたのだ。
結婚後の私の住まいは社長が用意してくれたファミリータイプの低層マンションだった。
だだっ広いLDKに個室が2つ。それと客間。
個室の1つはわたし用。もう一つは夫のものだけど、こちらは入ったことがないから中がどうなっているかわからない。
結婚当日だけは夫となった社長はここに泊まった。
チラリと”初夜”という言葉が頭をよぎったけれど、こんなモテそうな人がお子様に興味なんかないだろうと思った。
それは大正解で、
彼は豪華なディナーをご馳走してくれたあと、「いやだったらごめんね」と前置きし誓いのキスをしたのだ。
そして同じベッドに入ったけど、何もなく朝を迎えて彼は仕事に行き、この住まいには戻ってこなかった。
仕事が忙しいから職場の近くの部屋で寝泊まりするといっていたけど、それが本当かどうかはわからない。
それからすぐ、わたしは自由に暮らしていいと留学先のイギリスへの航空券、十分なお金と名前が新しくなったパスポートを与えられ笑顔で送り出されたのだった。
その後、残り二ヶ月だった留学があちらの教授に頼まれ二ヶ月延びることになり、結局帰国をしたのは四ヶ月後だった。それから大学も無事に卒業できた。
帰国してすぐ叔父たちに呼び出され、新婚なのに社長がわたしの海外留学を許可したのは偽装結婚で愛がないからだとか散々いちゃもんをつけられ帰国早々ぐったりした。海外にいたから保留にされていた面会も今後はきっちりさせてもらうし、親戚付き合いは疎かにしないようにと言われた。
結婚してもまだ諦めてない叔父たちに吐き気がする。
でも、そう言われるのは想定内だったから叔父たちの前ではべったりとくっついてソファーに座り、社長の腕にぎゅううっとしがみついたり頭を撫でてもらったりイチャイチャアピールはしていたのだけれど。
卒業後の進路についても案の定叔父たちは大政に入社するように勧めてきた。
両親が存命中ならそうしていただろうけど、今となっては大政に入るなどとんでもない。かといって就活には出遅れているどころか新卒入社時期などとうに過ぎている状況。
おまけにどこかの企業に入ろうとしても恐らく叔父たちからの妨害が入ることは確実だった。
残された道はーーー夫の会社に入ることだったのである。