琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「葵羽さん、これ確認お願いします」
「はい」
「葵羽さん、午前のIチームからの連絡まとめてあります。Cチームのは葵羽さんの出社後にって言ってましたからそろそろ来るかもです」
「ありがとう」
「昨日発注したーーー」
「葵羽さんーー」
「ちょっとこれなんですけどーーー」
昨日午後の早退と今日の午後出勤のせいで仕事がたまってしまい大忙しだ。
これだから雑用係はって感じで、わたしは滉輔さんの手の届かないところ、みんなの足りないところを少しずつ補っているのだけどそれがまとまると結構な量になるのだ。
でもおかげで同じフロアに社長がいても存在を忘れるほど忙しく働かせてもらえて助かったけど。
「やっほー、お疲れ。あとよろしく」
何がヤッホーだ。
18時ピッタリに滉輔さんは上機嫌で帰っていった。
ピアスの効果は上々だったらしい。瑠璃も昨日のうちに自宅に戻ったし。
それから経理や営業事務のスタッフも帰宅しはじめオフィスに残るのは営業の外回りから戻った数名とわたし、それと社長になった。
デザインルームの方にはまだまだいるだろう。
社長はとても忙しそうで、何度も電話がかかってきていたしパソコンとタブレットを使い分けて仕事をしていた。
あまり目にしたことがない社長が仕事をしている姿が珍しくて何度か視線を送ってしまったほどだ。
うーん、何度聞いても社長の英語の発音って綺麗。
彼の英語が母国語だからってことだけではない。
日本語と同じで英語にも結構地域によって訛りがある。
わたしも気をつけているけれど、発音は難しい。
大学時代の教授も少しだけアメリカ東部の訛りがあった。
それに社長は日本語も完璧だ。
日本にすっかり馴染んでいるのにわたしみたいに「マジで」なんて言葉も絶対につかわないし。
・・・・・・まああの容姿で「マジか」も「マジで」も言わないか。
18時半を回った辺りで社長がスマホでドイツ語を話しながらわたしに目配せをしてオフィスを出て行った。
ちょっと席を外すってことだろう。
「相変わらず格好いいですね、シュミット社長」
「憧れます。もっとここに顔を出して欲しいですよ」
「いくつもの違う業界の会社を全部うまく回しているなんてとんでもない能力ですよね」
残っていた営業の面々が口々に褒め称える。彼らが社長に憧れていることはよく知っている。
「葵羽さん、社長って何ヶ国語が話せるんですか?」
当然のように会話に参加させられる。社長に関してはわたしもあまり詳しくないんだけど。何せ愛妻らしいんで。名ばかりだけど。
「4?あ、完璧じゃなければ5だったかな」
日英独伊と仏。
フランス語は得意ではないと言っていた。彼の言う得意ではないってわたしの片言という意味とは大違いだ。
わたしはもちろん2カ国語しか話せない。それにその英語だって彼の完璧にはほど遠いし。
「5?!」
「化け物ですか」
そうそう。化け物なんだと思うよーーーー。
「ハイスペック過ぎませんか」
もしかしたらよく出来たアンドロイドなのかもしれませんねーーーー。
「社長みたいな人の奥さんなんて葵羽さんもすごいですよね。社長って家でも完璧なんですか。緊張しませんか」
いえいえ一緒に暮らしてないので大丈夫ですよーーーー。
営業部員の問いかけを心の中で答え、全て笑顔で躱していく。こうしていると相手が勝手にいいように解釈してくれるから楽ちんだ。
「はい」
「葵羽さん、午前のIチームからの連絡まとめてあります。Cチームのは葵羽さんの出社後にって言ってましたからそろそろ来るかもです」
「ありがとう」
「昨日発注したーーー」
「葵羽さんーー」
「ちょっとこれなんですけどーーー」
昨日午後の早退と今日の午後出勤のせいで仕事がたまってしまい大忙しだ。
これだから雑用係はって感じで、わたしは滉輔さんの手の届かないところ、みんなの足りないところを少しずつ補っているのだけどそれがまとまると結構な量になるのだ。
でもおかげで同じフロアに社長がいても存在を忘れるほど忙しく働かせてもらえて助かったけど。
「やっほー、お疲れ。あとよろしく」
何がヤッホーだ。
18時ピッタリに滉輔さんは上機嫌で帰っていった。
ピアスの効果は上々だったらしい。瑠璃も昨日のうちに自宅に戻ったし。
それから経理や営業事務のスタッフも帰宅しはじめオフィスに残るのは営業の外回りから戻った数名とわたし、それと社長になった。
デザインルームの方にはまだまだいるだろう。
社長はとても忙しそうで、何度も電話がかかってきていたしパソコンとタブレットを使い分けて仕事をしていた。
あまり目にしたことがない社長が仕事をしている姿が珍しくて何度か視線を送ってしまったほどだ。
うーん、何度聞いても社長の英語の発音って綺麗。
彼の英語が母国語だからってことだけではない。
日本語と同じで英語にも結構地域によって訛りがある。
わたしも気をつけているけれど、発音は難しい。
大学時代の教授も少しだけアメリカ東部の訛りがあった。
それに社長は日本語も完璧だ。
日本にすっかり馴染んでいるのにわたしみたいに「マジで」なんて言葉も絶対につかわないし。
・・・・・・まああの容姿で「マジか」も「マジで」も言わないか。
18時半を回った辺りで社長がスマホでドイツ語を話しながらわたしに目配せをしてオフィスを出て行った。
ちょっと席を外すってことだろう。
「相変わらず格好いいですね、シュミット社長」
「憧れます。もっとここに顔を出して欲しいですよ」
「いくつもの違う業界の会社を全部うまく回しているなんてとんでもない能力ですよね」
残っていた営業の面々が口々に褒め称える。彼らが社長に憧れていることはよく知っている。
「葵羽さん、社長って何ヶ国語が話せるんですか?」
当然のように会話に参加させられる。社長に関してはわたしもあまり詳しくないんだけど。何せ愛妻らしいんで。名ばかりだけど。
「4?あ、完璧じゃなければ5だったかな」
日英独伊と仏。
フランス語は得意ではないと言っていた。彼の言う得意ではないってわたしの片言という意味とは大違いだ。
わたしはもちろん2カ国語しか話せない。それにその英語だって彼の完璧にはほど遠いし。
「5?!」
「化け物ですか」
そうそう。化け物なんだと思うよーーーー。
「ハイスペック過ぎませんか」
もしかしたらよく出来たアンドロイドなのかもしれませんねーーーー。
「社長みたいな人の奥さんなんて葵羽さんもすごいですよね。社長って家でも完璧なんですか。緊張しませんか」
いえいえ一緒に暮らしてないので大丈夫ですよーーーー。
営業部員の問いかけを心の中で答え、全て笑顔で躱していく。こうしていると相手が勝手にいいように解釈してくれるから楽ちんだ。