琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
会社を出るときも社長はわたしの手を取り恋人つなぎにしてくる。
伊勢さんという社内の人間にも不仲を疑われまずいと思っているのだろうな。
わたしとしても不仲説は困るし肩や腰を抱かれるよりマシだと思って抵抗せず放置。
そもそもこんな美形と手をつなげるのはご褒美に近い。
「どこに行くんですか?」
「ガーリック料理を出す店」
ちょうどタクシーが来るのが見えて会話は中断した。
社長ってニンニクが好きなのかしら。
昨日も彼女がそんなことを言ってたし。それとも嫌味?
仕事と大政のこと以外共通の話題もなく、タクシーの中は無言だった。
窓の外を流れていく景色を見つめる。
結婚して2年半。東京に戻ってきてからは2年になる。
叔父たちはまだ諦めてくれないから離婚することは私にとって大きなマイナスになるだろう。
けれど、これ以上この人を縛り付けていいのかという気持ちもある。
昨日の彼女はだいぶ焦れていた。
愛し合っているのに名ばかりでも私のような妻がいるために愛人とか日陰の女などと言われてしまう立場だ。
自分が彼女の立場なら・・・・・・キツいだろうな。
今まで結婚を考えるような恋愛をしてこなかったから正確にはわからないけど。