琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
でも、あと半年、
これから半年で準備をして独り立ちをするのはどうだろう。
あの頃は子どもで自分の身を守るすべがなく全てこのひとに頼ってしまった。
けれど、もうわたしもあの頃のような子どもではない。
国内で生活するのが無理なら叔父たちの手が届きにくい国外に出てしまうのはどうだろう。
考えてみてもいいのかも。
お互い、この関係に終止符を打つのだーーー
窓の外から彼に視線を移すと彼もまた窓の外に目をやっていた。
彼女のことでも考えているのかしら。
昨夜ずいぶん不機嫌だった彼女の機嫌は直ったのだろうか。
滉輔さんのようにピアスでも贈ったのかも。
考えてもムダなこと。
そうは思っても胸の奥がざらざらとして落ち着かない。
あの時わたしがちゃんとした大人だったら、この人にも迷惑を掛けなくて済んだのに。
もう少し、あと半年ほど我慢してもらおう。
そのためには何をしなければいけないのか、考えることやることは山ほどある。お互いのために早く動こう。
薄暗い車内で見る彼の横顔はより一層造形の美しさを際出させている。
明るいところでは恥ずかしくて見たことがない社長の横顔をじっと見つめてみる。
彼の美しさを語るには日本人にはない彫りの深さということだけではなく、各パーツのバランスやその瞳の美しさも付け加えなければいけない。
わたしが一番ときめくのはその琥珀色の瞳だ。
初めて見たときと変わりないときめきが続いている。
本当に綺麗なんだよね。
人形?妖精?生命の宿る彫刻?
彼を見ると美の女神アフロディーテに愛された美少年アドニスの神話を思い出すことがある。
神話の中で美少年アドニスはアフロディーテの恋人に殺されてしまうのだ。
彼に夢中になる女性の噂を耳にすると不安になることがある。いつかこの人もそんな事件に巻き込まれてしまうのではないかと。
それだけ彼は魅力的だ。
ーーー生きてるよね?
車内に注がれる街の灯に照らされた彼の横顔に生気を感じない。
何か深く考えごとをしているのかぴくりとも動かない姿はまるで彫像のよう。
不安になって彼の顔に手を伸ばそうとして気が付いた。
彼の側の手が重い。
なぜか車内でも手が繋がれていた。
しかも手を繋いでいたことを忘れているなんて、自分でもびっくりだ。
あまりに普通にされていて気が付かなかったとかあり得ない話だ。
昨日から隣にいるときはいつも手を繋いでいたけど。
「どうした?」
繋いだ手を持ち上げそれをじっと見つめるわたしを社長が不思議そうに見る。
「これが普通になってたことに驚いてしまって」
ぷっ。
「そうか。ははははっ」
社長が楽しそうに笑いだした。
社長が吹き出すところも初めて見た気がする。
****
これから半年で準備をして独り立ちをするのはどうだろう。
あの頃は子どもで自分の身を守るすべがなく全てこのひとに頼ってしまった。
けれど、もうわたしもあの頃のような子どもではない。
国内で生活するのが無理なら叔父たちの手が届きにくい国外に出てしまうのはどうだろう。
考えてみてもいいのかも。
お互い、この関係に終止符を打つのだーーー
窓の外から彼に視線を移すと彼もまた窓の外に目をやっていた。
彼女のことでも考えているのかしら。
昨夜ずいぶん不機嫌だった彼女の機嫌は直ったのだろうか。
滉輔さんのようにピアスでも贈ったのかも。
考えてもムダなこと。
そうは思っても胸の奥がざらざらとして落ち着かない。
あの時わたしがちゃんとした大人だったら、この人にも迷惑を掛けなくて済んだのに。
もう少し、あと半年ほど我慢してもらおう。
そのためには何をしなければいけないのか、考えることやることは山ほどある。お互いのために早く動こう。
薄暗い車内で見る彼の横顔はより一層造形の美しさを際出させている。
明るいところでは恥ずかしくて見たことがない社長の横顔をじっと見つめてみる。
彼の美しさを語るには日本人にはない彫りの深さということだけではなく、各パーツのバランスやその瞳の美しさも付け加えなければいけない。
わたしが一番ときめくのはその琥珀色の瞳だ。
初めて見たときと変わりないときめきが続いている。
本当に綺麗なんだよね。
人形?妖精?生命の宿る彫刻?
彼を見ると美の女神アフロディーテに愛された美少年アドニスの神話を思い出すことがある。
神話の中で美少年アドニスはアフロディーテの恋人に殺されてしまうのだ。
彼に夢中になる女性の噂を耳にすると不安になることがある。いつかこの人もそんな事件に巻き込まれてしまうのではないかと。
それだけ彼は魅力的だ。
ーーー生きてるよね?
車内に注がれる街の灯に照らされた彼の横顔に生気を感じない。
何か深く考えごとをしているのかぴくりとも動かない姿はまるで彫像のよう。
不安になって彼の顔に手を伸ばそうとして気が付いた。
彼の側の手が重い。
なぜか車内でも手が繋がれていた。
しかも手を繋いでいたことを忘れているなんて、自分でもびっくりだ。
あまりに普通にされていて気が付かなかったとかあり得ない話だ。
昨日から隣にいるときはいつも手を繋いでいたけど。
「どうした?」
繋いだ手を持ち上げそれをじっと見つめるわたしを社長が不思議そうに見る。
「これが普通になってたことに驚いてしまって」
ぷっ。
「そうか。ははははっ」
社長が楽しそうに笑いだした。
社長が吹き出すところも初めて見た気がする。
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