琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「ですが、シュミット社長に言われた”小幡さんの特徴や面白みに欠ける”って言葉がどうしても忘れられなくて。今日は長谷川社長に提案してもらっている食材の組み合わせや食材の提供先に拘らずに作ってみました。ーーーいかがでしたか」

「私は昨日出して頂いたものより今夜のものの方が好みです。決して昨日のものが悪いわけではありませんが、特徴が無いというか他の店で食べたことがあると思っただけです。正直に言ってしまえば、メニューに関してはハウスオブダリアのフードコーディネーターに頼らず小幡さんの感性で作ってみたらいかがですか」

「私もそれを考えてみました。自分の店を出すというのに自信が無くてフードコーディネーターに頼り切りになるのは違うんじゃないかと」

「ええ、気が付いて頂けたならよかったです。小幡さんとハウスオブダリアの関わりはあくまでもメニュー開発のアドバイスと一部の有機食材提供目的としたもので、全面的に依存するのは違うと思ってましたから」

そうですよねーーーと小幡さんがため息をついた。

「いつの間にかアドバイスをもらうのではなく指示を受けるになっていました。情けないことです」

「確かにハウスオブダリアが全面プロデュースした店は話題になるでしょう。でもそれは小幡さんの目指すものではないと思いましたから少し声を掛けさせて頂いただけです」

「でもニンニクはこれを選ぶとハウスオブダリアの提携農場ではないところからの仕入れになってしまいますがいいのでしょうか」

「料理を作って提供するのは小幡さんなんですから問題ありませんよ。ご自分の納得するところから仕入れを行って下さい。ハウスオブダリアとの契約にここで使う全ての食材をハウスオブダリアの契約農家から仕入れるとは書いてありません。食材への拘りは追求するべきでしょう。仕入れ先にあてはあるのですね」

「はい、友人の親戚の青森の農家さんから直接にと思っています」

「ではあとは価格ですね。また相談がありましたらご連絡下さい。必要があれば契約のお手伝いもしますから。ーーああそれと、今後ハウスオブダリアの長谷川社長が出席する席にわたしは参加しませんのでご了承下さい」

「え、それはーー?ではここのオープンの時には」
小幡さんの顔色が変わった。
クリスチアーノ・シュミット社長という存在は後ろ盾でもあり客寄せパンダでもあるって事なのがわかる。

「うちのスタッフが、と言いたいところですがオープンの時には勿論わたしが顔を出しますよ、妻を連れて」

「ああよかった」と小幡さんがホッとしたように顔色が戻ってくる。

一方私はしっかり巻き込まれた側だけど。
オープンの時にハウスオブダリアからは長谷川社長が来るのだろう。またあのお相手かと思うとげんなりした。


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