琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
周りにいるのは敵か味方か
午前の仕事は何事もなく無事に終わり、クリスのリクエストでランチは先日伊勢さんと一緒になったお蕎麦屋さんに行くことに。
幸いランチタイムにはまだ少し早い時間で並ばずに座ることが出来た。
4人掛けのテーブルに案内されて2人でお品書きをめくっていく。
ランチメニューは初めて見たけれど夜と大きくは変わらないようだ。
「葵羽のおすすめは?」
「私もこの間が初めてだったからどれって聞かれても困るんですよね。でも、天ざるは美味しかったですよ。エビ天も大きかったし」
「ふうーん。で、今日は何にするつもり?」
「私はですねー、朝ご飯が美味しすぎてたくさん食べてしまったので・・・冷やしすだちそばにします。これならさらっと食べられそう」
いつもよりしっかり食べたから腹持ちがいい。
でも今日の夕飯が遅い時間になるのはわかっているからここで食べておかないと。
「あれでたくさん食べたって言うのか。葵羽の普段の朝食が心配になるな」
痛い所を突かれ聞こえないふりをする。
だって朝弱いし、食欲ないし。作るの面倒だし。
「まあ女性は朝の支度っていっても男よりいろいろあるだろうから大変なのはわかるけど」
「クリスだって毎日外食だって言ってたじゃない。それはどうなのかしら」
思わず言い返してしまったけれど、クリスが「へぇーー」っと頷きながら黒っぽい笑いを浮かべる。
それを見てしまった私は嫌な予感がして背筋がぞくりとした。
「じゃあ毎朝自宅できちんと食事をとろうか。もちろん夫婦水入らずで」
やっぱりそうきたか。
「やぶ蛇だった・・・・・・」
「明日の朝食用に帰りに買い物をするか。それとも明日の分の食材は今のうちに宅配手配しておくかなーーー」
クリスはスマホを取り出すと何やら検索をはじめた。
「知らないスーパーの食材よりコンシェルジュに提案して紹介してもらった方がいいなーーいや、やっぱり今日はとりあえず深夜営業しているスーパーでもいいか・・・」
なんだかとても楽しげだしすっかりやる気になっているようなので口を挟むことが躊躇われる。
会社を出たら彫刻スイッチはオフになっていて、今はとっても表情豊かだし口調も軽い。
「平日は俺が作るから休日はどっちかヒマな方が作ろう。俺は葵羽の作るものなら和食でも洋食でもなんでもいい。ああそうそう、食べ物にアレルギーはないか」
私としては同居そのものを拒否する発言をしたいところなんだけど、それを今ここで言うのはまずいだろう。
ここは会社の近くのお蕎麦屋さんで、しかもクリスの容姿は非常に目立つ。
どこで誰が聞いているかわからない。
今だって向こう側のテーブルにいる女性4人組がチラチラとクリスのことを見ているし。いつでもどこでも目立つ人だ。