琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?

「買ってきたものは俺が冷蔵庫に入れておくから葵羽は着替えておいで。昨日の夜に着ていたみたいなワンピースかちょっとコンビニに行けるくらいの部屋着がいい」

「外に食べにいくんじゃなかったんですか?」

「うん、外なんだけどね。まあ行ってみたらわかる。俺は昨日の夜のスウェットだから葵羽もそんな感じで」

ふうん。
よくわからないけれど、クリスが昨日のワンピースでいいって言うのならそうしよう。コンビニ程度なら行ってもおかしくないはずだし。


クリスに言われたとおりに着替え、さすがに手ぶらでというわけにはいかないのでミニトートバッグだけ持ってスウェット姿のクリスと再び外に出た。

「どこに行くんですか」
「すぐそこ」

連れて行かれたのはマンションの裏通りを入ってすぐのところにある看板のない小さなお店。
この道を通ったことはあるけれど、ここにこんなお店があることは知らなかった。



ドアの向こうに広がっていたのは普段のクリスには縁のなさそうな空間。
古くて狭い小さな居酒屋?みたいなお店だった。


「はい、お疲れ」
「お疲れさまです」
生ビールで乾杯した。

「部屋着って言った意味がわかっただろ」

うん。
それはもう、ね。

運ばれてきたものを見て納得した。

目の前には七輪。

そして今、美味しそうなお肉が焼かれている。
が、煙ももくもく。
換気扇はあるけれど、狭いお店だからテーブル毎にあるわけでは無い。
無煙ロースターなんてものじゃないから煙をダイレクトに受けている状態だ。

「でも、すごく美味しいです」
「そう、よかった」

七輪で炭火焼き肉。
都会のど真ん中でこれを味わうことが出来るなんて。すごく贅沢。

ただ生きる美術品のクリスがスウェット姿で煙にまみれながら七輪の焼き肉を美味しそうに食べているという絵面に慣れないだけで。

生ビールをジョッキでごくごく飲む姿なんてものも初めて見たし。


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