琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
マンションの部屋に戻るとクリスに先にバスルームを使うように言われ、有り難くそうさせてもらった。

今日の焼き肉は美味しかったけれど、髪や身体、服にべったりと付いた肉と煙のにおいがすごい。

急ぎつつあちこち念入りに洗ってバスルームを出るとクリスはパソコンで仕事をしていた。

自分でも言っていたけど、ちょっとの隙にも仕事をしちゃうのね。

でも、もしかしたらまだ仕事が残っていたのに私と一緒に夕飯を食べてくれたのかもしれない。どちらかはわからないけれど、聞いても本当のことは教えてもらえないような気がする。

夕食の時にいくつの会社を持っているのかと聞いたけど、なぜかはぐらかされたし。クリス個人の仕事に関する話題はNGらしい。

収穫はこの夕食で私たち二人の心の距離が少し縮まったことだ。
会話ってやっぱり大事。

クリスに夫婦なんだから敬語をやめるように言われた。
わかるけど今までのこともあるしそれは急に変えられるものではないので努力していく予定。

「お待たせしました。先にバスルーム使わせてくれてありがとう」

もうすっぴんを見せないようにすることは諦めていたからそのまま声を掛ける。

「クリスもそれ脱いだら洗濯機に入れてね。一緒に洗っておきます」
「ああ、悪いが頼む」

クリスもすぐにパソコンを閉じて立ち上がる。
早く洗い流したいのだろう。私に先にバスルームを使わせてくれたクリスに感謝だ。

「葵羽は先に寝てていいから。俺は風呂上がりにももう少し仕事をするし」

「そうなの?わかりました。・・・でも無理しないで早く寝てね」

仕事ばかりしているクリスのことが心配でつい口を出してしまったけれど、イヤじゃないかな。クリスの顔を窺うようにじっと見ると「そうだな、早く寝るようにする」と肯定的な返事がもらえてホッとする。

「うん、そうして」

バスルームに向かうクリスを見送り私も早々に寝る支度をして自室に入った。

そうでもしないとお風呂上がりのクリスと出会ってしまうからだ。

ヤバいと思うのよね、お風呂上がりのクリスの姿って。
たぶん色気で爆発してると思う。
そんなものを見てしまったら眠れなくなりそうだ。

明日は朝ご飯を作る手伝いをしたいし、早く起きるために早く寝ないと。

同じ屋根の下にクリスがいることを緊張しながらも受け入れはじめている自分に戸惑いながらベッドに入って目を閉じたーーーーーー
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