琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「葵羽さん、もうお昼ですよ。ぼーっとしちゃって大丈夫ですか」
谷垣さんに声を掛けられて時計を見ると、12時を回っていた。
そうだ、お昼ご飯。
今日莉子はラビの国社とのランチミーティングに行っているし、谷垣さんはお弁当持参。
わたしはビルの下にくるキッチンカーでランチを調達しようと思っていたけれど、この辺りで大評判の人気店なので早めに行かないと行列がすごい。
慌ててお財布を持って飛び出したものの、3台止まっているキッチンカー全てが既に大行列だった。
ああ、やっぱり12時を過ぎちゃったのは失敗だった・・・・・・。
今日はついてない。
他のコンビニも入店する気になれないほど混んでいて、結局もう少し歩いた先にあるオーガニックフードを取り扱うスーパーに足を運ぶことにした。
そういえばここのお店の話もクリスとした事があったっけ。
スーパーを出て会社に戻ろうと早足で歩こうとする私に
「待って」
と見覚えのある女性が通せんぼをした。
・・・目の前にはあの長谷川社長。
顔を合わせるのはあのパーティー以来だ。
ここ数ヶ月の間、この人がわざと私が勘違いするようにクリスとの仲を匂わせたことを私は今でもちょっと、いや結構根に持っている。
「何かご用ですか」
「あなたねぇ、いくら私が邪魔だからって仕事に口出しするなんて酷いじゃない」
長谷川社長の顔は怒りに震えていた。
仕事に口出しときたか。
全く身に覚えがないーーーわけではないけど、私がクリスに彼女との付き合いをやめて欲しいと言ったわけじゃない。
「仕事に関しては私は何も言ってません。何か文句があるのなら夫に言ってもらえませんか」
クリスの恋人かもしれないと思っていた以前の私なら反論することはしなかったけれど、今はもう違う。
「あなたが彼に何か言ったから私が外されたんでしょ。自分の会社の事業なのに小幡さんのお店は担当の社員しか関われないし、彼も一切顔を出してくれなくなったし。こんなのおかしいじゃない」
「ですから、私は何も言ってません。ただ、夫はあなたにあることないこと吹聴されて困っているから今後は接触しないと言ってましたけど。身に覚えはないですか」
「そんな。ーーーだって食事に誘ってくれたのは彼の方よ。あちこちに連れて行ってくれたわ。おかげで私の人脈も広がって事業も伸びたし、これからだっていうのに。私たち公私ともにいいパートナーなのよ。あなたなんてお飾りにもならない妻のくせにどうして私の邪魔をするの。いい加減に彼を解放しなさいよ」
お飾りにもならない妻、か。
この人から見たらそうなのかもしれないし、今まではそうだった。
だけど、私はそれを望んでいないし、クリスだって明らかに私との距離を縮めてきているからこれからは違う・・・と信じたい。
それにお飾りだとしても妻は私。それは間違いない。
「公私ともにだなんて誤解を招く言い方はやめていただけませんか。知らない人が聞いたら勘違いしてしまうかもしれませんし」
「勘違いですって」
「ええ。だってそうでしょう。うちの主人があなたにそう言ったんですか?仕事上のパートナーじゃなくて公私ともに自分のパートナーだって」
そう言ってやると長谷川社長の顔が怒りで赤くなり眉が更に上昇して行く。