琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
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予定より少し早い時間に社長は待ち合わせ場所のロビーにやってきた。
昼間会ったときとは違うスーツ姿だ。
胸ポケットから覗くチーフも華やかで、さすがパーティー慣れしているなと思う。
「待たせたか?」
「ちょっと早めに着いたからさ、お前を待っている間に仕事の話が出来てちょうどよかったよ。ね、葵羽ちゃん」
「はい。ちょうどいいタイミングでした」
滉輔さんとは莉子ちゃんのラビの国社の話もしたかったので社長を待っている時間は都合がよかった。
滉輔さんと共に笑顔で問題ないと返事をすると一瞬なぜか社長が変な顔をした。
ただ気のせいだったかもしれない、すぐに私の装いを鑑定するように上から下までまじまじと見てくる。
「・・・・・・変でした?」
自信がない私はすぐにその視線に負けそうになる。
だって宝石みたいに澄んだ琥珀色の瞳に見つめられるのは未だ慣れないし、社長は自分自身が映画俳優のように美しくてセンスもあるから私みたいな平凡女子は隣にいるとどうしていいのかわからなくなるのだ。
容姿もスタイルもファッショセンスも平凡。
このようなパーティーの時は社長の指示に従いあらかじめ決められたセットの中からその場にあったものを着ているだけで、言ってしまえばそこに私のセンスも意思もない。
今夜の指示は大人セクシー系ワンピース、色はワインレッドだった。
企業のパーティーだからスーツでいいのではと思ったけれど、そうではなかったらしい。露出は少ないものの胸元と裾が下品にならない程度に開いている。自分じゃ絶対に選ばないスタイルだ。
セットされたワンピースに靴とアクセサリーを身につけヘアメイクするだけ。アイシャドウと口紅も指定されているから考える手間もない。
ちなみに、
社長によって準備されているスタイルはいろいろあって大人清楚系なんてのもあるしスーツやドレス、ワンピース、着物もあって色柄も違う様々なパターンが用意されているからまだ着たことがないものがたくさんクローゼットの中に収納されている。
どれだけ私のファッションセンスが信用されていないかがわかるというもの。
「指定のものを着てきたつもりでしたけど・・・。失敗でした?」
じろじろ見るだけでなにも言わない社長にやっぱり失敗だったかもと冷や汗が出る。そもそも色気とかセクシーとかを私に求めるのが間違っている。
「おい、クリス。お前の返事待ちだぞ」
滉輔さんが社長の脇腹を肘で突いた。
「ああ、悪い」はっとしたように社長が答えた。
「悪いだと?」「やっぱりですか」
滉輔さんと私が同時に声をあげると珍しく社長が慌てる。
「いや、返事が遅れて悪いと言っただけ。葵羽は悪くない。むしろ似合ってて驚いた。いつの間にか大人になってたなと思って」
え、そっち?と滉輔さんと顔を見合わせ苦笑した。
確かに結婚したときはまだ大学生だったから小娘だったけど。