琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?

急転直下




応接室で今朝の中林さんの件とさっきの長谷川社長の件を伝える。

「またあの女か。仕事がしたいと言うから協力したのに自分の会社を潰したいのか」

「公私ともにクリスのパートナーは自分だって。頭にきたから言い返しちゃった。そうしたら身の危険を感じるくらいすごい勢いで怒りだしてこれはヤバイかもって思ったところに伊勢さんが通りがかってくれたから助かったんだけど」

「は?”公私ともに”?」

「そう言ってたけど。ねえそれって勘違いさせたあなたも悪いってことじゃないの?大体何であの人があなたのこと”シュミット社長”じゃなくて”クリス”って呼んでるの?そういうことなの?」

「いや、そんなことはない。わざと葵羽にそう言ってるんだ。公私の”私”の関係は元からないし、今や”公”も解消間際なんだがな。あの会社の将来性を信じて紹介した他の事業者に迷惑がかかるから会社との関係を打ち切ることはしなかったけど、もう限界だな。決断させるか」

「・・・どういうこと?」

「ハウスオブダリアが長谷川社長を切るかハウスオブダリアがうちとの関係を切るかって事だ」

どっちがどっちを切るか・・・・・・。

「あそこは長谷川社長とその妹が興した会社なんだ。尤も妹の方は表に出ないで裏方業務をしている。見た目に華やかな姉が表に立って動くことで上手く会社を回しているんだ。が、こうなるとうちとの関係を壊したいとしか思えないよな。やっぱりパーティーで葵羽の腕に怪我をさせた時に決断すべきだった」

「でも、そんな大事になったらいろいろな方面に迷惑が」

私の背筋が寒くなる。

事は思ったよりも単純なことじゃないらしい。
私はただクリスと長谷川社長との関係を正しく知りたかったのと、出来ればわたしとクリスに今後接触しないで欲しかっただけなのだ。

このままにしておいてもいずれどこかでまたやらかすだろうから決断は必要なことだとクリスは言う。

「あとはロイに任せる。伊勢君のことは洸輔に任せるってことでいいな」

私は頷くしかない。

「じゃあここからが本題。
悪いけど、葵羽にはしばらく休暇を取って欲しい。1週間、いや2週間かな。その間に大掃除をするから。今日このまま帰宅して旅行に出る支度をしておいて」

長期休暇に大掃除?

既に洸輔さんは了承済みってことで私の残務も洸輔さんがなんとかしてくれるそうだ。

詳しい話は帰宅後にってことで私は早退することになった。もちろん疑問はある。
でもクリスがそう言うのなら私はただ従うだけだ。
彼は絶対に私を裏切らないのだから。

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