琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
クリスに言われるがまま部屋に帰って荷造りをしていると2時間ほどでクリスも帰宅したのだけど、
飛行機の時間が迫ってるから急いで出たいとかですぐに連れ出され、落ち着いたのは飛行機の中だった。

「今さらどうして私のパスポートまでクリスが持ってるのかは訊かないけど、どうして急いで日本から出たかったのかは教えて」

「近日中にオーマサで緊急取締役会が開かれあの中林さんと葵羽のお父さんの右腕たちが反乱を起こす。野木社長は失脚するだろうな」

あの叔父が失脚・・・。
予想外の事に言葉が出ない。

「この先オーマサの社内が荒れることが考えられるから葵羽は身を隠した方がいい。もちろん葵羽がトップに立ちたいのなら別だけど」

「た、立ちたくない」

「じゃあいいな。休暇を利用して旅行に行こう。エーゲ海の島に住んでる俺の両親にも会わせたいし」

そうだ、クリスのご両親とはテレビ電話で結婚の挨拶をしたきりになっている。なんて不義理なことをしている嫁だろう。

「私、クリスのご両親に嫁って認めてもらえるかな」

「心配しなくていいよ。二人はウキウキして待ってるから。それと、忘れないで、俺の両親はもう葵羽の親でもある。義父と義母だ。他人行儀なことを言うとあの二人泣き出すぞ」

そう言って私の頬をそっと撫でてくれる。
画面越しに見たご両親の姿を思い出した。

そうか、
お二人はもう私の義父と義母。
ちょっとくすぐったい響きに頬が緩んでしまう。

「数日間は島で過ごしたら次は葵羽が行きたいところに移動しよう。休暇は長い」

そう言うとクリスがあくびをした。
よく見るとクリスの顔には疲労の色が強い。

「少し休んで。私との時間はたくさんあるんでしょ」

今度は私がそっとクリスの目の下の隈に触れるとクリスはふっと微笑んで目を閉じた。
そうしてあっという間に眠りに入ってしまった。

すぐさま女性のCAさんが毛布を手に現われる。

「ありがとうございます。あとは妻のわたしが」とニコリと笑顔でCAさんから毛布を受け取るとCAさんがチラリとクリスとわたしの左手の指輪を確認したように見えた。

もちろん(・・)と言ったのはわざとだ。
搭乗したときから美人のCAさんがずっとクリスに熱い視線を送っていたからちょっといやだったんだよね。

女性たちのクリスを見つめる視線には慣れているとはいえあまり気分のいいものではない。
自分の気持ちに気がついてしまった今は特にだ。

受け取った毛布をそっとクリスに掛ける。
疲労の滲む顔を見ていると彼の健康状態が心配になる。言いたいことも聞きたいこともたくさんあるけど今はまだ我慢。

< 93 / 96 >

この作品をシェア

pagetop