溺愛してみたい君振り向かせたくて
 2


 大学にある教授の部屋は、広かった。

 応接室と書斎、二部屋ある。

 俺は、高級感溢れる応接室で席を外している教授を待っていた。

 外へ続くドアの向こうで、話し声がきこえるが、きき取れない。

 かすかにきき覚えのある女性の声がする。

 昨日の見合い相手だろうか?

 似ているような違うような?

 多分見合い相手なのだろう。

 俺が模索していたその時、ドアが開いた。

 「祥君、この子なのだが」

 ノックもせずに入ってきた、相変わらず横暴な初老の教授。

 彼は、珍しく渋い顔で頭を掻いている。

 黒革張りのソファで寛いでいる俺のもとへ、一人の少女を連れてきた。

 腰まで長い漆黒の髪に、肌色が透けるように白い。

 人形のように、端正な顔立ち。

 Gパンに、オレンジ色の無地のTシャツと、飾りっ気がない。

 それでも昨日の見合いの相手と、多少なりに似ているような気はする。

 だが、化粧していないせいか、あまりにも雰囲気が違いすぎる。

 あの女性は、今時のメイクがばっちり施されていて、ショートカット。

 自信ありげで、勝気な雰囲気があった。

 目の前の少女は、はるかに幼く見える。

 その上大きな瞳は、おっとりとした感じで少し垂れている。
 
「天原しえ君の妹で、えみ君だ」

「妹?」

 俺は、切れ長の瞳を興味深げに光らせる。
 
「そう。えみ君、彼が白石祥君だ」

「はじめまして」

 えみと名前を教えてくれた彼女は、見た目の年相応とは思えないほどの物腰で頭を垂れた。

 昨日の姉のほうも、見事な所作だった。

 それでも彼女のほうが、どういうわけか優雅に見え、好感が持てた。
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