次期社長の執着愛。 〜御曹司だと知らずに逃げた苦労人女子なのに、社長になって、全力情愛で追いかけてくる。〜
2.別れの準備
別れる決意をしたはいいが、そのまま伝えて終わりには出来ない。別れるための準備をしなくてはいけない。
まず別れた後、私は村岡貿易を辞めようと思っている。村岡貿易には恩があって大学の学費を支援する制度である企業奨学金制度をやっていたのを利用して大学に通えた。その制度は五年働けば奨学金を返さないでいいという条件があったのでこれまで働いていたが、私は六年目だ。だから、もう辞めても大丈夫だ。
「辞めるつもりはなかったんだけど……仕方ない」
就活をして、住む場所も探さないといけないなぁと考える。いっそのこと田舎にでもいいかもしれない……誰も知らない場所で一から始めていくのもいいのではないかと思う。
それにお父さんには病院で診てもらおうと思っている。今更かもしれないけど、ここを離れることを考えている今行くべきだと思うし、このままの関係を続けるのはお互いのためにならない。
何より……お母さんが可哀想だ。
「一度、菜美姉さんにも相談すべきかもしれない。あの日以来だな……」
菜美姉とは、お母さんの妹で私にとっては叔母さんだ。母が亡くなってからたまに支援してくれていたし、私が父の前で母を演じていることも知っている……というか知られてしまった。