次期社長の執着愛。 〜御曹司だと知らずに逃げた苦労人女子なのに、社長になって、全力情愛で追いかけてくる。〜
私が大学生になって初めての長期休みの時、実家に帰ってきていたいつもと同じで私は母の代わりをして父に抱かれていた。
抱かれた翌日、九時ごろにたまたま様子を見に来たと言う菜美姉がやってきた。インターホンで起きた私は、モニターも見ないで適当に服を着て急いで玄関を開けてしまって全てバレてしまった。
『聖菜ちゃん、いつから……』
『高校三年生、の時です。母に似ていると、言われて……それから、ずっと』
菜美姉は、気づかなくてごめんねと何度も何度も謝ってこんなことは間違ってると言って病院に行こうと言ってくれた。だけど当時の私は父が笑ってくれるなら何でもしたい、どれだけ自分を犠牲にしたっていいとあの頃は思っていた。
『菜美姉の気持ちは嬉しい。でも、お父さんが笑ってくれるの。ずっと無表情で泣いてばかりだったのに、私をお母さんだと思っている間は笑って幸せそうだから』
『でもね、こんなの間違っているわ。あなたは菜奈じゃない。あなたは渉さんの妻じゃない。娘よ。こんなの菜奈は望んでないわ。今はいいかもしれない、だけどいつか後悔する日が来ると思うの』
何度も何度も説得しにきてくれたのに、私はその度に突き放した。私が病院に行くという選択肢を捨てた結果、疎遠になってしまった……年賀状のやり取りはあるものの、もう何年も会っていない。
彼女が住んでいるのは、東京ではなく愛知県だ。都内で暮らしていたけど、菜美姉の息子で私にとったら従兄が愛知に住んでおりそのまま結婚したのでその近くで住むことになったと去年の年賀状に書いてあった。
「確か、海のみえる田舎町だって聞いたけど……年賀状どこにあったかな」