次期社長の執着愛。 〜御曹司だと知らずに逃げた苦労人女子なのに、社長になって、全力情愛で追いかけてくる。〜
「失礼します。遅くなってすみません」
ここはうちのホテルだが、相手は大企業の社長と社長代理になるくらいの男だ。礼は尽くさなくてはいけない。
「……ハルも待たせて悪い。だが俺は迎えだけを頼んだはずなんだが?」
「そうなんだけど、気になるだろ。聖菜ちゃんがこっちに来るまで、俺には空白期間があるんだ。それに、この方々は元恋人、友人というくせに聖菜ちゃんのこと何も知らなかったんだ。知っていたのは企業奨学金制度を使って大学に行って村岡貿易に入った優秀な人ってだけなんだ。五年は一緒にいたはずなのに」
「そうなんだね。だけどハル、落ち着いて。気持ちはわかるけど、そんな喧嘩腰じゃ話にならないよ」
「だけどさ、二人は知りもしなかったし四年も放っておいたのに今更話がしたいだなんて都合がいい。なんの話に来たんだか」
ハルはこうなっては怒りが収まらないんだよな。彼は、さっぱりしているような雰囲気だが真逆だ。
情が厚いし、何よりシスコンみたいなところがある。会えなかった期間もあったが、聖菜ちゃんが従妹として大好きなのだ。
俺も今更だとは思うけど、ここは我慢だ。フゥと息を吐くと、満面の笑みを貼り付けて彼らを見た。