獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第十四章:ゲルド様のクロスペル

目的地に到着した私は、周りに誰もいないかと辺りを見回す。
そして久しぶりに気合を入れて、アユタヤの実を取るために樹木を登り始める。
そして無事ゲット!…と思った瞬間、突然太い枝が私の体に襲いかかり、きつく巻き上げ始め高く持ち上げられる。
「えっ?何よこれ!キャアァァァァァァァァァ‼︎!」
私は涙目で悲鳴をあげる。
猫だから高いところ大丈夫だと思われがちだが、地面や土台がないところで持ち上げられる場合には、不安定なうえ恐怖を感じるのは当たり前である。
これヤバくない?私人生のピンチに遭遇してるんですけど!とはいえ、私が1番乗りできたと言うことは、誰も来ないことと=だと気付いたのはそれから数秒後のことだった。
パニックで頭が真っ白になり、アユタヤの実を持ったまま頭を抱えて脱出策を考える。
その時いきなり声がした。
「何やってんだ?そんなとこで。木とへんてこなダンスを踊るなんて変わったやつだな…。」
この声は…ゲルド様⁈ってこらのどこがダンスに見えるんですか?!
私は勢い余って叫んだ。
「そんなわけないじゃ無いですかっ!私は暗号が解読できたのでその指示に従ったらこうなったんですよっ!」
彼はため息をついて、首から下げている少量の水を地面にかけて、手をかざした。
その瞬間、かざした箇所が光り始め、水が姿を変え、水色のロングソードの形になった。
これがゲルド様のクロスペル?
彼はそれを掴むと樹木に登って、切断した。
ここまでで助かってよかったといけばよかったのだが、もう一つ問題が残っていた。
そう、それはもちろん私のことである。
結構高いわけではないけれど、高所恐怖症の私にはまるでこの世の地獄にも思えることである。
もう少しで地面にぶつかるっと思い目を瞑る。
しかしなぜか、痛いという地面の感触が全くこない。
おそるおそる目を開けると、ゲルド様が抱き止めてくれたことを悟った。
「どうも!申し訳ございませんでした!処分は謹んで受けますので!」
土下座して、謝罪をした私にゲルド様の声が響く。
「いや、謝罪の必要はない。そもそもこれはこちらの不手際だからな。」
そして、スキャンダルになるかもしれないからと森の入るところまで送り届けてもらっただった。
まさか…次期公爵様に一介のメイドが無礼を働くなんて…。
このスピレもといラニンは完全なる不覚です‼︎と心の中で叫んだあと、すぐ気持ちを切り替えてアユタヤの実を届けるために走り出した。
⭐︎⭐︎⭐︎
スピレは知る由もなかった。
ゲルドが王宮での仕事を爆速で終わらせて、こっそりと様子を伺っていたことに。
また、彼がこの事がきっかけで彼が少々顔を赤めらてスピレへの片思いが一層募ったのも、この時、例のパラメラもこっそりと影から執着の目で見られているということも、それらに気づく素振りすらない自分のことでさえも。



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