獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第二章:その頃、リーフェント城では

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レイナはるんるんで廊下を歩いていた。
やっと邪魔な義姉がいなくなったのだから、こんな愉快なことはない。
本当はクロスペルを使っても良かったのだが、不吉な女にわざわざ使いたくもないし、使う価値もない。
お城のみんなはざわついているが、そうなる元凶の一つである彼女にはそんなの関係なかった。
スピレは自分から出ていったのだから、王位継承権も棄却した筈だ。
つまりは、次の王位に立つのはレイナということになる。
「これで彼をお父様に紹介してお城で一緒に暮らすことができるわ!」
小さくガッツポーズをした彼女は早速、極秘で付き合っている彼に現状を伝える手紙を書いた。
そう、彼がラビリスゲルのスパイとして潜入しているということも知らずに。
手紙を受け取ったレイナの交際相手ークラルク•バルメンディーは小さく笑いながら呟く。
「これで機密情報も掴めるかもな。本当にバカなお姫様だ。」
そして、その手紙を炎の中に投げ入れ、ブラウシェリ家に報告に向かった。
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この手紙が今後大きな事件を巻き起こすなんて、この時は誰もが想像しなかったのである…。
同時刻、王のアルギスは自室でため息をつきながら写真を見つめた。
この写真は、側室であり、スピレの実母、ミルフェイユだ。
彼女はスピレを産んだ後、難産ということもあっただろうか、周囲の陰口や嫌がらせにより精神的に参ってしまい、自殺してしまった。
アルギスは妻を守れなかったと罪悪感を抱いて生きてきた。
だから、せめてミルフェイユに生き写しで唯一の宝、スピレだけはと愛情を与えて育ててきた。
ブラウシェリの出してきた、こちらに好都合の条件すら蹴ってまだスピレを渡すのを拒んだのに、彼女は自ら出ていってしまった。
「私はどうしたら良かったんだ…ミルフェイユ…」
そう呟いても写真の中の彼女はただ笑顔を浮かべて微笑んでいただけだった。
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