獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第三章:森で出会った貴族様

「よし、ここまで来れば大丈夫ね。」
翌日私は、周りにいる自分の荷物を持ったメンバーに声をかける。
彼らは私に仕えていたり、興味本位だったり、留学の候補として同伴したり、他国への憧れをもっている人たちで今回、私とラビリスゲルに渡ることになる。
もちろん、種類はバラバラだ。
どこにいるのかバレる訳にはいかないので徒歩でラビリスゲルを目指す。
実はここでは、クロスペルという力が存在する。
人数は少数だが彼らのような獣人は皆、その種族だけが使える力を持って生まれてくる。
それは王族や高い身分の貴族がほとんどで、王女である私も例外ではない。
だが、中にはリムのように平民でも発言する可能性がある。
(リムは貧民街で生まれ育ったが、ある日突然、クロスペルが発現したことにより王城に勤めらことになった。そして現在とある縁で私の侍女になっている。彼女は家族思いで給料の半分を家族に仕送りしているらしい。)
例えば、黒猫の私は光がなくても周りがはっきり見えるといった具合だ。
この世界ではクロスペルが存在するのが当たり前だが、異世界?というところには人間という、猿族の進化バージョンの種族がいるらしいけど、彼らには王族や貴族でも、このような力はないという。
なんか、色々な言語を話すとお母様が教えてくれた。
城を出た私たちは平民の服に着替え森に入り、ラビリスゲルの方向へ進んだ。
歩くのに夢中で気付けば5日程過ぎていた。
なのにまだ、ラビリスゲルには着く気配がない。
その時、誰かがこちらにくる音が聞こえた。
ふと顔を上げると、銀髪の短い髪をした少年が通り過ぎていた。
服装を見た限り、貴族だろう。
どこの国の貴族か不明だが、一応場所を聞いてみることにした。
「あの…ここはどこですか…私達、ラビリスゲルに行きたいのですが…」
彼は大声でこう言い放った。
「うわっ!不吉を象徴する黒猫じゃないか‼︎くそっ、会っちまったのは仕方ねぇ。ここはラビリスゲルの国境付近だ。後はお前らでどうにかするんだな‼︎」
そして、もと来た道に進んでしまった。
あの子無事に帰れるのかしら。
私は頭の片隅でそう思いながら、後ろを振り返る。
「もう少しよ。頑張りましょう‼︎」
私は皆を励まして、足を進めた。
この時、私は気が付かなかった。
誰かが木陰の後ろから私の事を見つめる人物がいたと。
その人物はニヤッと笑ってこう呟いた。
「やっと見つけたぞ…俺の愛しの妹、スピレ。ククッ、クククククッ…」
彼の不気味な笑いが闇の中から微かに漏れたのにも当然気付かなかったのだ。

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