十五年の石化から目覚めた元王女は、夫と娘から溺愛される
ある日、ルークが夕方には帰ってくると聞かされたカミラは驚いた。
「ということは、夕食も一緒に食べられるのね!」
「そのようです。我々も気合いが入ります!」
そう言うのは、がたいのいいコックたち。
普段はカミラが先に食べ、夜遅くに帰ってきたルークが温め直したものを食べるという流れだったので、ルークにできたてを食べてもらえるから彼らも嬉しいのだろう。
いつもはカミラが寝付くか寝付かないかという頃に帰ってくるルークが、夕方には帰宅する。夕食も一緒に食べられるし……きっと、たくさん話ができる。
(そうよ。私たちに足りなかったのは、時間よ)
厨房を後にしたカミラの足取りは、軽い。なんだか、見慣れた屋敷の廊下さえいつもより美しく輝いているように思われた。
(ルークとゆっくり過ごしたら、彼が何が好きで何に気が障るのかわかるはずよ。それに、私のこともわかってもらえる……)
自分はパメラのように美しくないから、気が利かないから、年上だから、とうじうじしていては何も始まらない。
ルークに頼るのではなくて、自分から彼に歩み寄ろうと決めたではないか。
(そうだ。今日の夕食で、この前贈ってもらったネックレスをつけようかしら)
ルークはまめな性格で、女性使用人からカミラのサイズを教えてもらうなり仕立屋にドレスの注文をしたし、宝石類も贈ってくれる。
どうやら彼は先代国王が没する前にかなりの褒美をもらっていたようで、それらをカミラのために惜しみなく使ってくれている、とメイドが教えてくれた。
ルークは口数こそ多くないが服飾センスはあるようで、ドレスもアクセサリーも靴もカミラの好みにぴったりのものばかりだが、惜しむらくは彼と生活リズムが合わないので身につけたところを披露できていない。
(今日はただの夕食ではなくて晩餐なのだから、おめかししたいわ!)
メイドにも相談すると、「絶対に旦那様は喜びますよ!」と賛成してくれたので、カミラはいつもより早めに風呂に入って髪もきれいにまとめ、ルークが贈ってくれたドレスの中から一番気に入っているワインレッドに金色の文様の入った秋物ガウンに袖を通した。
髪留めもネックレスも、ルークからの贈り物だ。
「素敵です! きっと旦那様も、奥様に見惚れます!」
仕度を手伝ってくれたメイドは、カミラを完璧に仕立てられて満足そうだ。
ちょうどそのとき、階下から「旦那様のお帰りです」と言う声が聞こえてきたため、「頑張ってください!」と応援してくれるメイドに微笑んでからカミラは一階に向かった。
(どうしよう。すごくどきどきしている……!)
裾も袖も長いドレスが立てるさらさらという音がやけに耳に響くようで、頬が熱くなってくる。
(ルーク、なんて言ってくれるかしら? み、見惚れてくれるのかしら……?)
あのルークが見惚れる姿は想像できないが、無口ながら紳士な彼のことだから、絶対に褒めてくれるはず。それでいい雰囲気になってそのまま、和やかな気持ちで夕食を一緒にできれば……。
玄関が見えてきた。使用人に荷物を渡すルークの姿が見える。
――どくん、と打ち鳴らされた太鼓のように心臓が高鳴る。
「ということは、夕食も一緒に食べられるのね!」
「そのようです。我々も気合いが入ります!」
そう言うのは、がたいのいいコックたち。
普段はカミラが先に食べ、夜遅くに帰ってきたルークが温め直したものを食べるという流れだったので、ルークにできたてを食べてもらえるから彼らも嬉しいのだろう。
いつもはカミラが寝付くか寝付かないかという頃に帰ってくるルークが、夕方には帰宅する。夕食も一緒に食べられるし……きっと、たくさん話ができる。
(そうよ。私たちに足りなかったのは、時間よ)
厨房を後にしたカミラの足取りは、軽い。なんだか、見慣れた屋敷の廊下さえいつもより美しく輝いているように思われた。
(ルークとゆっくり過ごしたら、彼が何が好きで何に気が障るのかわかるはずよ。それに、私のこともわかってもらえる……)
自分はパメラのように美しくないから、気が利かないから、年上だから、とうじうじしていては何も始まらない。
ルークに頼るのではなくて、自分から彼に歩み寄ろうと決めたではないか。
(そうだ。今日の夕食で、この前贈ってもらったネックレスをつけようかしら)
ルークはまめな性格で、女性使用人からカミラのサイズを教えてもらうなり仕立屋にドレスの注文をしたし、宝石類も贈ってくれる。
どうやら彼は先代国王が没する前にかなりの褒美をもらっていたようで、それらをカミラのために惜しみなく使ってくれている、とメイドが教えてくれた。
ルークは口数こそ多くないが服飾センスはあるようで、ドレスもアクセサリーも靴もカミラの好みにぴったりのものばかりだが、惜しむらくは彼と生活リズムが合わないので身につけたところを披露できていない。
(今日はただの夕食ではなくて晩餐なのだから、おめかししたいわ!)
メイドにも相談すると、「絶対に旦那様は喜びますよ!」と賛成してくれたので、カミラはいつもより早めに風呂に入って髪もきれいにまとめ、ルークが贈ってくれたドレスの中から一番気に入っているワインレッドに金色の文様の入った秋物ガウンに袖を通した。
髪留めもネックレスも、ルークからの贈り物だ。
「素敵です! きっと旦那様も、奥様に見惚れます!」
仕度を手伝ってくれたメイドは、カミラを完璧に仕立てられて満足そうだ。
ちょうどそのとき、階下から「旦那様のお帰りです」と言う声が聞こえてきたため、「頑張ってください!」と応援してくれるメイドに微笑んでからカミラは一階に向かった。
(どうしよう。すごくどきどきしている……!)
裾も袖も長いドレスが立てるさらさらという音がやけに耳に響くようで、頬が熱くなってくる。
(ルーク、なんて言ってくれるかしら? み、見惚れてくれるのかしら……?)
あのルークが見惚れる姿は想像できないが、無口ながら紳士な彼のことだから、絶対に褒めてくれるはず。それでいい雰囲気になってそのまま、和やかな気持ちで夕食を一緒にできれば……。
玄関が見えてきた。使用人に荷物を渡すルークの姿が見える。
――どくん、と打ち鳴らされた太鼓のように心臓が高鳴る。