十五年の石化から目覚めた元王女は、夫と娘から溺愛される
「お父様は、私にとても優しくしてくださいます。でも優しいだけでなくて、私が間違ったことをしたら正しい道へと促してくださいます」
そう言うディアドラの眼差しは、とても優しい。
「それでも私、お父様に反抗してしまうことがありました。色々あって、生きるのが嫌になることもありました。……そのたびに私はお母様が眠られる部屋に行って、お母様にご挨拶しました。そうして、お母様の腕を見たのです」
「腕?」
「お母様は、私を庇って石化されました。だからお母様は、一歳の頃の私を抱っこしているときのまま体が固まっていたのです」
そういえば、カミラはディアドラを一切傷つけるまいとしっかりと抱き込んでいたため、体が固まってしまったことでルークに娘を託すことができなかったのだった。
「だから、お母様の腕には私がいた場所の空間がありました。……そこを見るたびに、私はお母様の愛情を感じました。そして、私を守ってくださったお母様のためにも後ろ向きになってはならない、強く生きなければならないと自分に言い聞かせました」
そう語るディアドアの青色の目が、潤んでいく。
「……私、毎日お母様の部屋でお祈りしていました。早くお母様が目覚めますように、って。私はいい子にするから、立派な伯爵令嬢になるから、どうか早くお母様を助けてくださいって神様に祈り続けました」
「ディアドラ……」
「だから……お会いできて本当に嬉しいのです、お母様。こうして、お話がしたかった。ディアドラ、と呼んでほしかった。抱きしめてほしかっ――」
「ディアドラ」
カミラは堪えられず立ち上がり、ディアドラの体をぎゅっと抱きしめた。
カミラの中では、ディアドラはまだ「かーた」と言えるようになったばかりの一歳児だ。
その子がこんなに大きく立派になるほどの間、カミラはそばにいてやれなかった。
守るどころか、心配させてしまった。
「私もよ。私も……あなたを守れるのなら死んでもいいと思ったけれど、やっぱりあなたに会いたかった。私のかわいいディア……」
「お母様……」
カミラの腕の中で、う、うえ、とディアドラが嗚咽を上げる。
その肩が小刻みに震えるので我慢しなくてもいいと背中を撫でると、ディアドラはカミラに抱きついて叫ぶように「お母様!」と言った。
(私は……ちゃんと守れたのね)
自分とほぼ同じ背丈になった娘を抱きしめながら、カミラは一粒だけ涙をこぼした。
そう言うディアドラの眼差しは、とても優しい。
「それでも私、お父様に反抗してしまうことがありました。色々あって、生きるのが嫌になることもありました。……そのたびに私はお母様が眠られる部屋に行って、お母様にご挨拶しました。そうして、お母様の腕を見たのです」
「腕?」
「お母様は、私を庇って石化されました。だからお母様は、一歳の頃の私を抱っこしているときのまま体が固まっていたのです」
そういえば、カミラはディアドラを一切傷つけるまいとしっかりと抱き込んでいたため、体が固まってしまったことでルークに娘を託すことができなかったのだった。
「だから、お母様の腕には私がいた場所の空間がありました。……そこを見るたびに、私はお母様の愛情を感じました。そして、私を守ってくださったお母様のためにも後ろ向きになってはならない、強く生きなければならないと自分に言い聞かせました」
そう語るディアドアの青色の目が、潤んでいく。
「……私、毎日お母様の部屋でお祈りしていました。早くお母様が目覚めますように、って。私はいい子にするから、立派な伯爵令嬢になるから、どうか早くお母様を助けてくださいって神様に祈り続けました」
「ディアドラ……」
「だから……お会いできて本当に嬉しいのです、お母様。こうして、お話がしたかった。ディアドラ、と呼んでほしかった。抱きしめてほしかっ――」
「ディアドラ」
カミラは堪えられず立ち上がり、ディアドラの体をぎゅっと抱きしめた。
カミラの中では、ディアドラはまだ「かーた」と言えるようになったばかりの一歳児だ。
その子がこんなに大きく立派になるほどの間、カミラはそばにいてやれなかった。
守るどころか、心配させてしまった。
「私もよ。私も……あなたを守れるのなら死んでもいいと思ったけれど、やっぱりあなたに会いたかった。私のかわいいディア……」
「お母様……」
カミラの腕の中で、う、うえ、とディアドラが嗚咽を上げる。
その肩が小刻みに震えるので我慢しなくてもいいと背中を撫でると、ディアドラはカミラに抱きついて叫ぶように「お母様!」と言った。
(私は……ちゃんと守れたのね)
自分とほぼ同じ背丈になった娘を抱きしめながら、カミラは一粒だけ涙をこぼした。