十五年の石化から目覚めた元王女は、夫と娘から溺愛される
 ディアドラの話では、ルークは三日後には帰ってくるとのことだった。

 今年で三十三歳になったルークは、ラプラディア王国を守りシャムロック家のために尽くすことこそが、自分がするべき使命だと考えているようだ。
 そこには、いざ妻が目覚めたときに昔よりずっといいラプラディア王国を見せてやりたい、という気持ちがあるからなのだろうとディアドラは語っている。

 ルークが帰ってくるまでの間に、カミラはまず現状の把握と体調管理に努めることにした。
 ディアドラからここ十五年間のことはざっくり教わっているものの、時勢の移り変わりについていくのは容易ではない。覚え直すことも新しく学ぶことも、たくさんあった。

 それに、今のところ頭が少しふわふわするくらいではあるものの健康にも気を遣う必要がある。
 すぐに医者の診察を受けたのだが、特に問題なし、ただし少し筋肉が弱っているようだと言われたため、ディアドラに付き添われて草原を歩いたりしながらリハビリを行った。

 そして、自分の石化が無事解けたことを皆に伝える必要もある。
 まずは親しい者だけに伝えるべきだろうということで、王都にいる国王と王太子、そしてアッシャール帝国にいるパメラに手紙を送った。

 どうやらパメラはアッシャール帝国皇帝になった夫のもとで過ごしており、三人の子どもにも恵まれているという。
 パメラはカミラが石化したことも知っていて、何度もディアドラやルークの様子を見に来てくれた。だからディアドラも、叔母のことをよく知っているし慕っているようだ。

(それにしても。石化している間は、年を取らないのね)

 復活して二日目の夜、鏡に映る自分の顔を見ながらカミラはしみじみと思った。

 カミラとしては、十五年間の石化期間は『ない』も同然だった。脳まで石化して意識が途絶え、次の瞬間にはこの屋敷で目を覚ましていた。長い眠りについていたというより、十五年の歳月が一瞬で過ぎていったような感覚だ。

 魔術による石化だからか、体も二十六歳の頃と寸分違わない。
 もう娘は大きくなっているが、カミラの体は子どもを産んで一年経ったばかりだ。使用人たちの協力のおかげで子育てでぼろぼろになることはなかったが、我ながら十六歳の娘がいるとは思えない見た目である。

(今の私がルークと並んだら、どういう感じに見られるのかしら……)

 十五年前は八歳年下だったルークだが、カミラが石化中に年齢を取らないとしたら今はルークの方が七歳年上になっている。しかもカミラは十八歳になったルークを見ることができずに石化したから、カミラの記憶にあるルークは十六歳のときで止まっている。
 だから、それから十七歳年齢を重ねたルークがどんな姿になっているのか、想像もできない。

(ディアドラは、ルークの見目がいいみたいなことを言っていたけれど……)
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