十五年の石化から目覚めた元王女は、夫と娘から溺愛される
そこで部屋のドアがノックされたため、カミラは鏡の前から立ち上がった。
「どなた?」
「あの、お母様。ディアドラです」
ドアの向こうから、まだ聞き慣れない娘の声が聞こえてくる。おやすみの挨拶はもうしたのだが、どうかしたのだろうか。
ドアを開けるとそこには、かわいい寝間着姿のディアドラがいた。父親と同じ濃い灰色の髪は就寝用に太めの三つ編みにされていて、レース付の枕を抱えている。
「ごめんなさい、お母様。夜中に来てしまって」
「気にしないで。何かお話ししておきたいことでもあった?」
十歳若いだけの娘に優しく問いかけると、ディアドラは頬を赤くしてもじもじしながら口を開いた。
「あの。私ずっと、お母様と一緒に寝たかったのです」
「まあ……」
「赤ちゃんの頃……本当に微かだけど、寝る前にお母様が頬にキスしてくれたことを覚えているのです。寝るのが不安なときも、お母様にキスをしてもらったらよく寝られたから……それで……」
「……ふふ。そういうことなのね」
カミラは微笑み、ドアを大きく開けた。
「そういうことなら、どうぞお入りなさい」
「いいのですか!?」
「もちろんよ。かわいい娘のお願いを聞かないわけがないでしょう?」
カミラがそう言うとディアドラは照れたように笑い、部屋に入ってきた。
ディアドラが言っていたように、ルークは王都にある元男爵邸を取り壊してこちらに移る際、カミラの部屋のものだけはそっくりそのまま移してくれたようだ。そのおかげで毎日使っていた鏡台やベッドなどもそのままあり、カミラも安心して使えていた。
一人用のベッドは少し小さいが、女性二人で寝るならなんとかなりそうだ。
ディアドラと二人でベッドに入ると、彼女は「えへへ」と恥ずかしそうに笑った。
「なんだか不思議。お母様と、こうやって一緒に寝られるなんて」
「私も、まだ色々追いついていけていないところもあるけれど、立派に成長した娘とこうして一緒にいられて嬉しいわ。これまで甘えさせられなかったのだから、これからも寂しくなったらいつでも言ってね」
「も、もう大丈夫ですよ! それに……明日お父様が帰ってきたら多分、お母様をずっとお父様に取られちゃうし……」
「何か言った?」
「何でもありませんっ」
もごもご言っていたディアドラはカミラの腕に掴まり、頬を寄せてきた。
「お母様……。十五年前、私を守ってくれて本当にありがとうございます。大好きです!」
「ディアドラ……私も大好きよ」
カミラは微笑み、ディアドラの頬にそっとキスをした。
ディアドラは驚いていたようだが、目尻をほんのり赤くして嬉しそうに笑ったのだった。
「どなた?」
「あの、お母様。ディアドラです」
ドアの向こうから、まだ聞き慣れない娘の声が聞こえてくる。おやすみの挨拶はもうしたのだが、どうかしたのだろうか。
ドアを開けるとそこには、かわいい寝間着姿のディアドラがいた。父親と同じ濃い灰色の髪は就寝用に太めの三つ編みにされていて、レース付の枕を抱えている。
「ごめんなさい、お母様。夜中に来てしまって」
「気にしないで。何かお話ししておきたいことでもあった?」
十歳若いだけの娘に優しく問いかけると、ディアドラは頬を赤くしてもじもじしながら口を開いた。
「あの。私ずっと、お母様と一緒に寝たかったのです」
「まあ……」
「赤ちゃんの頃……本当に微かだけど、寝る前にお母様が頬にキスしてくれたことを覚えているのです。寝るのが不安なときも、お母様にキスをしてもらったらよく寝られたから……それで……」
「……ふふ。そういうことなのね」
カミラは微笑み、ドアを大きく開けた。
「そういうことなら、どうぞお入りなさい」
「いいのですか!?」
「もちろんよ。かわいい娘のお願いを聞かないわけがないでしょう?」
カミラがそう言うとディアドラは照れたように笑い、部屋に入ってきた。
ディアドラが言っていたように、ルークは王都にある元男爵邸を取り壊してこちらに移る際、カミラの部屋のものだけはそっくりそのまま移してくれたようだ。そのおかげで毎日使っていた鏡台やベッドなどもそのままあり、カミラも安心して使えていた。
一人用のベッドは少し小さいが、女性二人で寝るならなんとかなりそうだ。
ディアドラと二人でベッドに入ると、彼女は「えへへ」と恥ずかしそうに笑った。
「なんだか不思議。お母様と、こうやって一緒に寝られるなんて」
「私も、まだ色々追いついていけていないところもあるけれど、立派に成長した娘とこうして一緒にいられて嬉しいわ。これまで甘えさせられなかったのだから、これからも寂しくなったらいつでも言ってね」
「も、もう大丈夫ですよ! それに……明日お父様が帰ってきたら多分、お母様をずっとお父様に取られちゃうし……」
「何か言った?」
「何でもありませんっ」
もごもご言っていたディアドラはカミラの腕に掴まり、頬を寄せてきた。
「お母様……。十五年前、私を守ってくれて本当にありがとうございます。大好きです!」
「ディアドラ……私も大好きよ」
カミラは微笑み、ディアドラの頬にそっとキスをした。
ディアドラは驚いていたようだが、目尻をほんのり赤くして嬉しそうに笑ったのだった。