コドカレ。


さっきまで馬鹿みたいに笑っていた女子高生が、遠くを見つめながら頬に涙が伝う。その姿があまりに綺麗で、凄く驚いた。


「あんた、いいね。真っ直ぐで……」

「……え?」

「……私も小学生に戻りたいよ」


なんて小さく口にして、目の前で涙を流す女子高生に一体何て声をかけてあげればいいのか分からない。

戸惑いながらも彼女の頭にポンと右手を置いて、そのまま撫で下ろせば、想像以上に髪の毛がさらさらしていて、いい匂いが俺を包み込んだ。


友達との話題は、ゲームと漫画とサッカーばかりで。目の前の涙を流している女子高生にかける言葉なんて分からない。

それでも、"あんた"ではなく名前を知って貰いたくて。


「ヤマト」

「……」

「俺の名前、赤沢 大和」

「私……アヤ。矢野 綾」


この場面で今更自己紹介はあり得ない、と思いながらも自分の名前を口にして。
鼻をすすりながら自己紹介をした彼女の名前を胸に刻んだ。


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