『俺を好きになるな』って言ったのに、幼馴染(転生姫)がフラグを折らせてくれません
第五章「俺を好きになるなよ。じゃないと、お前は——」
〇透真の部屋・夜
部屋のカーテンは半分だけ閉められ、月の光が差し込んでいる。
デスクに広げられたノートの上には、びっしりと記された異世界の文字。
透真はそれを静かに指でなぞりながら、ページを閉じた。
彼の手元にあるのは、『鳳凰国』の記録と、封印に関する覚書。
雫にこれ以上記憶を思い出させてはならない——
そう自分に言い聞かせながらも、今日の彼女の顔が焼き付いて離れない。
透真M「どうして……あんなにも思い出しそうな目を、するんだよ。今のままでいてくれって、言ったじゃないか……」
透真は額に手を当て、ぐっと目を閉じる。
彼の表情には焦りと戸惑い、そして激しい葛藤が滲んでいた。
〇学校・教室
翌朝。
透真が教室に入ると、雫はすでに自席に座ってノートを眺めていた。
けれど、まるで上の空のように、視線は一点に留まっている。
透真は無言でその隣に腰を下ろす。
透真「……ちゃんと寝たか?」
雫「うん……たぶん」
その言葉とは裏腹に、雫の表情はぼんやりしていて、眠れていないことが透真にはすぐに分かった。
透真「また、夢を見た?」
雫「……うん。昨日と同じ。名前を呼ばれたの。玲蘭、って……」
透真の指が一瞬、固まる。
だが表情には出さずに微笑む。
透真「そんな名前、気にするな。ただの夢だ」
雫「でも、透真……その名前、あなた知ってるよね?」
教室のざわめきが、二人の会話だけをすり抜けていくように静かに感じられる。
透真はゆっくりと目を伏せた。
透真「……知らないよ。あんな本読んだこともないし」
雫の顔がほんの一瞬だけ曇る。
その表情が、透真の胸を強く刺す。
〇並木道・放課後
夕焼けに染まる帰り道。
木々の隙間から差す光が、ふたりの影を長く伸ばしていた。
透真と雫は、無言で並んで歩いている。
雫「ねえ……透真は、私が誰かを好きになったらどうする?」
透真「……なんでそんなこと聞くんだ」
雫「なんとなく……気になって」
透真の歩みが、ほんのわずかに止まりかける。
だがすぐに、何事もなかったかのように言葉を返す。
透真「そうだな。……お前が幸せになれるなら、応援するよ」
その声は柔らかい。
けれど、雫にはなぜだか冷たく感じた。
風が吹き抜け、雫の髪がふわりと透真の頬をかすめる。
透真が、それを指先でそっと払った。
透真「……でも、俺を好きになるなよ」
雫「……え?」
透真「もしお前が俺を好きになったら——」
透真の声がかすかに震える。
透真「——お前は、死ぬ」
雫の目が大きく開かれる。
その言葉の重さに、ふたりの間の空気が張りつめる。
雫はその意味を理解できずに、心臓だけが強くドクンと跳ねた。
部屋のカーテンは半分だけ閉められ、月の光が差し込んでいる。
デスクに広げられたノートの上には、びっしりと記された異世界の文字。
透真はそれを静かに指でなぞりながら、ページを閉じた。
彼の手元にあるのは、『鳳凰国』の記録と、封印に関する覚書。
雫にこれ以上記憶を思い出させてはならない——
そう自分に言い聞かせながらも、今日の彼女の顔が焼き付いて離れない。
透真M「どうして……あんなにも思い出しそうな目を、するんだよ。今のままでいてくれって、言ったじゃないか……」
透真は額に手を当て、ぐっと目を閉じる。
彼の表情には焦りと戸惑い、そして激しい葛藤が滲んでいた。
〇学校・教室
翌朝。
透真が教室に入ると、雫はすでに自席に座ってノートを眺めていた。
けれど、まるで上の空のように、視線は一点に留まっている。
透真は無言でその隣に腰を下ろす。
透真「……ちゃんと寝たか?」
雫「うん……たぶん」
その言葉とは裏腹に、雫の表情はぼんやりしていて、眠れていないことが透真にはすぐに分かった。
透真「また、夢を見た?」
雫「……うん。昨日と同じ。名前を呼ばれたの。玲蘭、って……」
透真の指が一瞬、固まる。
だが表情には出さずに微笑む。
透真「そんな名前、気にするな。ただの夢だ」
雫「でも、透真……その名前、あなた知ってるよね?」
教室のざわめきが、二人の会話だけをすり抜けていくように静かに感じられる。
透真はゆっくりと目を伏せた。
透真「……知らないよ。あんな本読んだこともないし」
雫の顔がほんの一瞬だけ曇る。
その表情が、透真の胸を強く刺す。
〇並木道・放課後
夕焼けに染まる帰り道。
木々の隙間から差す光が、ふたりの影を長く伸ばしていた。
透真と雫は、無言で並んで歩いている。
雫「ねえ……透真は、私が誰かを好きになったらどうする?」
透真「……なんでそんなこと聞くんだ」
雫「なんとなく……気になって」
透真の歩みが、ほんのわずかに止まりかける。
だがすぐに、何事もなかったかのように言葉を返す。
透真「そうだな。……お前が幸せになれるなら、応援するよ」
その声は柔らかい。
けれど、雫にはなぜだか冷たく感じた。
風が吹き抜け、雫の髪がふわりと透真の頬をかすめる。
透真が、それを指先でそっと払った。
透真「……でも、俺を好きになるなよ」
雫「……え?」
透真「もしお前が俺を好きになったら——」
透真の声がかすかに震える。
透真「——お前は、死ぬ」
雫の目が大きく開かれる。
その言葉の重さに、ふたりの間の空気が張りつめる。
雫はその意味を理解できずに、心臓だけが強くドクンと跳ねた。
