天使の階段
その瞬間、お父さんの平手打ちが飛んできた。

体が後ろへ倒れる。

「金さえもらえればだと?おまえというヤツは……金で体を売ったのか!!」

そしてもう一度、お父さんの右手が挙がった。

「もう止めてください!」

お母さんが間に入った。


「紗香だって、被害者なんですよ!」

「うるさい!おまえが甘やかすから、こういう事になるんだ!」

お父さんは、私からお母さんを引き離した。

「もういいですから!」

お母さんはお父さんに、泣きながらしがみついた。

「明日、病院に行ってちゃんと、処理して来ますから!」

「当たり前だ!高校生で妊娠だなんて、冗談じゃない!」

お父さんは、おもむろに引き出しの中から、封筒を取り出すと、お金を取り出しテーブルの上に置いた。

「これで充分だろ!!」

1万円札が10枚。

震えるお母さんの肩越しに、私はお札の枚数だけを、数えていた。
< 27 / 81 >

この作品をシェア

pagetop