天使の階段
翌日、連れて行かれた病院は、統吾君のお父さんが経営する病院だった。

運が悪い事に、産婦人科の先生は、統吾君の母親だ。

「先生、一刻も早く処理をお願いしたいんです!」

お母さんは、必死だった。

「待って下さい、お母さん。妊娠6カ月では、堕胎は無理なんですよ?」

一瞬、お母さんの表情が歪む。

「じゃあ産めと仰るんですか?紗香はまだ、16歳なんですよ?相手の男と連絡も取れませんし……産むなんて、とんでもない!」

先生は、私の顔をじっと見た。

「紗香さんも、同じ気持ちなのかな?」

私は頷くだけ、頷いた。

だって、私に決定権はない。

「分かりました。では処理しましょう。但し、出産という形になります。」

「出……産……?」

「陣痛促進剤を使って、人工的に陣痛を起こします。ただ初産ですので、子宮口の開きは遅いでしょう。そこで風船のようなモノで、徐々に子宮口を開いていきます。産まれた胎児は、死産という形を取らせて頂きます。」
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